エピローグ
第158話 エピローグ
◆トワイライト
「エーデルが……負けた……?」
その一報を聞いたウェストコットは愕然とした。
報告に来た人間に、何度も聞き直したくらいだった。
エーデルが誰かに負けるなんて思いもしなかった。
そして話を聞いていく内に、彼がただ単に負けただけではなく命を落としたことを知ったウェストコットは血相を変えてとある場所へと向かった。
その場所は――全てを産みし者との謁見の間。
雑にノックし、入室する。
「
ウェストコットが声を張り上げると、全てを産みし者がいる場所のカーテンが揺れる。
「エーデルが死にました! これは予想外です! 次の手を打たなくてはいけないです!」
「……」
しかし相手から反応はない。
焦りもあってウェストコットは声を荒げる。
「判っているのですか!? あいつが死んだってことがどういうことか! 貴方はそれを理解しているのですか!?」
「……」
「何で……何で何も言わないのですか……?」
「……」
「……っ!」
無反応な彼女に、ウェストコットは青筋を立てる。
「聞いているのか!? ナ――」
「おやおや。声を荒げてどうしたのですか?」
――急速に頭が冷えた。
ウェストコットは後ろから聞こえて来たその声の持ち主に対して眉根を潜める。
「……ピエロ。いつからそこにいた?」
「ん? 私はどこにでもいますし、あなたがいると思ったらいるのですよ」
「相も変わらず意味不明なことを口走っているな」
そう口にしつつも、内心は先程の激昂の先に言おうとした言葉について冷や汗を掻きながら、ウェストコットはピエロに問う。
「で、お前は何の用だ?」
「私もあなたと同じ用だと思いますがね。でもでも
ピエロは指をくるくると廻しながら告げる。
「エーデル・グラスパーが敗北したことによって『強硬派』が一気に勢力を増しましたね。これで一気に『穏健派』の立場が弱くなったわけですよ。ねえ――『穏健派』の代表さん?」
「……」
ウェストコットは苦虫を噛み潰した様な顔をする。
トワイライトも一枚岩ではない。様々な派閥がある。
エーデルという存在は強硬派を押さえつけるキーマンでもあり、絶対的な勝利者がいたことが余裕というものをトワイライトにもたらしていた。
しかしながら、今はそれがいなくなってしまった。
結果、対抗勢力が力を増すのは必然的だろう。
というよりも、こちらの勢力が弱まった、という言い方の方が正しいが。
「さてさてさて、大変なことになりましたねえ。ウェストコットさん、そして――
どこの派閥にも所属しておらず、かき乱す存在であるピエロは、そんな様子をどこか楽しんでいるような口調で両手を広げながら声高に告げた。
「――我々の悲願成就の為の最後の引き金を絞る時が、ね」
剣崎遥は盾を所望する 狼狽 騒 @urotasawage
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