月が綺麗ですね

@kichibe55

第1話

今でも私の心を切なくさせ春の暖かさも感じないほどの貴方と出会ってしまったのは神様の気の迷いからくるものだったのかもしれない。時を感じさせない流れの中で貴方と私は出逢い惹かれてしまった。それは、気づいてはいけない自分との出会いでもあった。

私、立花真琴は今までの束縛に解放され肌寒くなり帰宅ラッシュに飲まれる道を歩いていた。彼と出会ったのは去年の夏だった。サークルの友達に誘われた海のバーベキューでの出会いで背が小さいながらにしっかりと鍛えられた体が印象的だった。顔は整っている中にもまだ高校生の時の面影が残るような子供っぽさがあり笑うと可愛い人だった。その彼とはその日抜け出し次の日まで2人で過ごした。結局付き合うことになり喧嘩もしたが普通の毎日を過ごして行った。一個下でありながら就職をしている彼は実家暮らしをしていたがいつもお金がないという印象で、私は昼は大学に行き、夜はクラブで働いて彼とのデートの費用はわたしが全てまかなっていた。そんな彼から電話で別れを切り出されたのが一週間前。いろんな人に相談したけど反対されたからという意味のわからない理由だった。あらかた元カノに相談していたらそっちの方が良くなってしまったのだろう。そんな理由がありならわたしはお前と100回くらい別れてるわ。と、思ったが電話越しで何故か泣いている彼に怒りすら湧かなかった。それよりも目の前に出された夕飯のメンチカツを食べたかったのだ。それじゃ、とだけ伝え電話を切り目の前の母の手作りのメンチカツに切り替えた。未練があるかといったらどうかわからないがバイト中や学校以外の時間を常に彼に捧げていたため時間があまりにあまりなにをすればいいかわからなかった。幸い、遊ぶ友達やお金には困っていなかった。少し自慢になってしまうが、わたしは特別可愛いというわけではないが程よく顔は整っているため中学、高校と男に困ったことはなかった。今でも呼べば誰かが付いてくる。でも、それは体だけの関係であって心はそこにはなかった。行為をすればそれまで、愛や大切という言葉は当てはまらずただただ気持ち良さと時間を潰す道具でしかなかった。相手もきっとそうであったであろう。気分が乗らなければメールを返さないことは当たり前だし自分の気分次第で甘える、まるで野良猫だった。いろいろな飼い主の元をさまよい本当に自分を愛してくれる人を探していたのかもしれない。そんな中、ある男と連絡を取っていた。中学の時に目をつけていた一個上の先輩だ。頭も良く性格もいい、見た目もそこそこ整っているため、周りの女の子の会話の中心になることが多かった。高校に入ってから顔を合わせることはなかったが時々メールをするなかだった。そんな時その先輩から恋人ができたという連絡が入ったのだ。他県の大学の子でタイのボランティアで出会いまだ相手はタイにいるため遠距離だということだった。わたしはとても腹が立った。性格上欲しいと思ったものは手にしなければ気が済まない性格だからだ。先輩は鳥取で一人暮らしをしていた為、すぐに理由をつけ会いに行くことにした。バスと電車を乗り継ぎ最寄駅に着くと先輩は駅の待合室の椅子に座りながらこっちを見て手を振った。

「長旅ご苦労様。久しぶりだね、6年ぶりかな?」

わたしが思っていたよりも幼さが抜け声が少し低くなった先輩がわたしの顔を覗き込みながら微笑み首をかしげた

「ありがとうございます。そうですね、、、わたしが高校に入る前だったので。」

少しいつもより声を高くしてわたしは微笑み返した

「それじゃ行こうか、荷物持つよ。夕ご飯は行きつけのダイニングバーに行こうと思ってるから荷物だけ部屋に置きに行こう。」

そう言いながら先輩はわたしのキャリーバックをわたしの手から拐うと歩き始めた。昔から歩くのが早いのは治っていないようで、わたしは駆け足で先輩の後を追いかけた。

わたしが思っていたよりも2倍ひろいマンションに付き2階に上がると鍵を開け

「どうぞ」

とドアを開けた、私は

「お邪魔します」

といい中に入った。荷物を置くとすぐに部屋を出て夕飯を食べに向かった。

すぐ近くのダイニングバー「H」は薄暗い店内に間接照明が置いてありとても大人な雰囲気だった。予約していたらしくすぐに席に案内され腰を下ろした。

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