非常に骨太な印象の、SF小説。「消失」の瞬間の、何か違和感を感じながらその正体に分からないという描写が見事で、そこから実際に世界が限界点を超えて転がり落ち始めるまでのタイムラグの置き方など、物語としての語り方も素晴らしい。舞台を移しつつ描かれる各エピソードも、バックボーンとなる情報がしっかりとしていていずれも魅力的でした。個人的には初期の国産本格SF小説を思い出しますが、ここからどう展開していくのかと期待せずにはいられない感じです。
月が消えたら…想像もしなかったような設定の世界を描くこの物語。世界の全貌が明らかになるごとにドキドキし通しです。続きが読みたくて仕方がなくなる!
著者は「SFは不慣れ」みたいなことをおっしゃっていますが、とてもそうは思えない。 まだ序盤だと思いますが、世界各地に視点を切り替えて世界を重厚に見せていく手腕、「もし月が消えたら」というシンプルだが力強いアイディア、登場人物の内面の実在感までふくめて、大ベテランが書いたとしか思えない。 きっと傑作になると思う。