僕とおじさん

真珠

星の降る日


 ‪「星の降る日があるんだよ」‬


 ‪そう言うおじさんに連れられて、透明な海に浮かぶ島に来た。冷えるからといってコートにセーターにいろいろ着込んだ僕らはもこもこしすぎていてなんだか滑稽だった。


 島はお祭り騒ぎで、そこここにいろんな色のステンドグラスが使われたランプが吊るされている。冬の寒さが研がれて鋭くなった夜に、いろんな色を反射しながらゆらゆら揺れるランプは少し海月に似ていた。


 裏路地のバーに入った。初めての場所なのに、おじさんは前にも来たことがあるみたいにしっかりとそのお店に向かって歩いた。


「まだ飲める年じゃないだろう」


そういいながらダークチェリー色の中に泡がぱちぱち弾ける液体が入ったグラスをくるりと回して愉快そうに笑った。

僕は癇に障ったので、すっとおじさんの手からグラスを抜き取って飲み干してやった。


「お酒を飲むのに年齢制限なんていらないさ」


おじさんは、高い酒だったのに、と残念そうに呟いて、球体のグラスに月光のように白く輝く金箔を浮かべた青いお酒をバーテンダーから受け取っていた。

僕はダークチェリーの後は何も飲まずに、立派なエメラルドで作られた魚の形をしたボトルを眺めていた。

ここの島は良質な宝石がよく採れるらしく、開店の際にバーテンダーの誕生石の、とびきり大きいエメラルドを使って宝石職人の友人が作ってくれたそうだ。

バーテンダーの話とお酒で、おじさんは楽しそうにしていた。僕も楽しかった。


 そろそろ時間だ、と懐中時計を取り出しておじさんが言うので、僕らは店を後にした。


 街で一番大きい星が降る時間、灯りは全て消えて、街で揺れていたランプのステンドグラスみたいな星屑がやわく発光しながら僕らめがけて落ちる。‬


小高く見晴らしの良い丘に登って二人で空を眺めた。雨のようにぱらぱらと降ってきたそれは少し硬度を持っていて、たまに顔や額に当たると少しだけ痛かった。

おじさんは手のひらにハンカチを広げてびゅん、と勢いよく手を振った。


「見て、ほら」


その大きな手に握られた星は、降ってきた時よりもっと眩く輝いてピンクの光を僕の頬にぶつけてきた。おじさんの瞳も同じピンクに輝いていた。

おじさんは小瓶に星を採集して、キャッチするとき熱く発熱するものがあるから気をつけるんだよ、と僕にハンカチを渡してから星採りを再開した。


おじさんの見よう見まねで僕も腕を降ってみた。確かに捕まえる瞬間にちり、と熱い感じがして思ったよりも重量がある。

シリウスのように青白い星が採れた。


「中々良い形じゃないか」


「うん、僕もそう思ったんだ」


 しばらく採集してから泊まるホテルに行った。ホテルのベッドの枕とシーツの間に小さな紙袋に入れた発光するシリウスを挟んで寝た。


 海月とおじさんが、きらきら輝く海の中でダンスしている夢を見た。

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僕とおじさん 真珠 @fairytale

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