開錠屋と放火犯。鼓動が止まるほど読ませ、動悸が止まらなくなる後読感。

文庫本ほどの文字数があるとのことだが、文庫本とはこんなに短いのかと錯覚する小説だった。

とにかく手が止まらない。そして感情を揺さぶる。
ドロドロの闇を描く内容にも関わらず、
シンプルな文体とシニカルな言葉遣いが謎の疾走感を与えている。

主人公達は傍から見たら狂った犯罪者でしかないが、
小説を通じて覗いてみれば、その狂気は極々どこにでもありそうな事情と孤独から生まれたものだ。
誰でも、誰にでも起こりうる狂気が、ちょうど放火のように燃え上がったけだ。
それが妙にねちっこい現実感を醸し出す。
「ああ、こんな奴ら居そうだな」と思えてしまうし、
一歩間違えば自分も手を染めていたかもしれないとすら錯覚する。
登場人物の狂気が流れ込んでくるような内容だった。


作品のタグが「青春 犯罪 高校生 お仕事」。
あらすじだけ読んだ当初は笑ってしまったが、完読した今では全く笑えない。

ピッキングと放火を繰り返し、金を得る。
これが彼らの青春であり、壊れた人間の彼らは、こういう形でしか自己探求や自己実現が出来ないのだ。