異常都市

@mareni

第1話 ハジマリ

 2023年、とある地方都市の中心に、直径10メートル程の隕石が落ちた。

 その隕石が落ちた瞬間、荒れ狂うような衝撃波や、膨れ上がった火炎が、周囲のビル郡や建物郡を薙ぎ倒し、地面には深くて巨大なクレーターが穿たれた。

 ……それだけでも大事件には違いないが、その隕石には、ある特異な『細菌のようなモノ』がくっ付いていた。

 その『細菌のようなモノ』は、隕石が衝突した瞬間、その衝撃波に乗って地方都市全体を包むように広がり……やがて、爆発的な勢いで、都市中の人間がソレへ感染した。

 ある者は影響が薄く人間のまま、またある者は醜悪な化け物へと変貌し――そしてある者は、後に『変異者』と呼ばれる、自分の中に眠る歪んだ欲望を満たす為の『能力』や『自由に変異できる肉体』を手に入れた。

 政府はこの事態を重く受け止め、すぐさま『都市の平穏を守る』という名目の下、化け物を鎮圧する為、重火器武装の自衛隊を導入した――が、そこで目にしたモノは地獄のような光景だった。


 ただ、脅えのままに助けを叫び、逃げ惑う人々。

 その、逃げ惑う生きた人間の四肢を引き千切り、臓物を貪り食らう化け物。

 その化け物や、ただの人間を嬉々として殺戮、蹂躙する、変異者や能力者。


 政府はこの事態に、当然のごとく苦慮した。

 放っておけば、人道的思想を掲げる団体から突き上げを喰らい、かと言って、政府の手に負える事態ではなかったからだ。

 自衛隊は、余計なトラブル(細菌の保有者)を外へ出さぬよう……つまりは、都市の人間や化け物、それ以外が、都市の外へ出ないように防ぐのが精一杯だった。


 それから、一ヶ月ほどの後……。

 ほんの僅かに落ち着きを取り戻した、件の地方都市から政府宛てに連絡があった。

 いわく、

『今、この都市は強い能力を持つ五人の変異者が治めている。

政府には、この五人に物資などのバックアップを頼みたい。

代わりに、この都市の外へは、何人たりとも出さない』

 と言う内容だった。

 政府としては、現実に小康状態となり、最低限の落ち着きを見せる地方都市に、選択の余地はなかった。


 そこから、更に二年の月日が流れ……地方都市は、一応の落ち着きを取り戻していた。

 例えば、学生(俺もだが)は、学校へ通い始めていた、などだ。

 ……だが、それは、あくまでも表向きだけの姿だ。


 この都市は、異常だ。

 人狼や吸血鬼、夜な夜な人を攫っては殺す『殺人クラブ』や、首狩り魔の殺人鬼などが、当たり前のように跳梁跋扈している。

 外から『異常都市』と呼ばれる程度には、この都市は壊れている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異常都市 @mareni

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ