第6話 真実

 僕は前の探索でこの屋敷のことをアパートのようなものかと思っていたが、お父さんやお母さんの会話を盗み聞くとその推測は間違っていた。


 この屋敷全てがうちのものだそうだ。


 お父さんは貴族らしい。

 廊下にいる従業員のように見えたあの人たちはメイドや執事と言った人たちなのだろう。


 だがそんなことよりも今はこの世界の情報だ。


 この屋敷にある部屋全てがこの家のものならば本のようなかさばる物はどこか一つの部屋にまとめて保管されているはずと言う推測のもと、僕はメイドや執事の監視を潜り抜けお父さんの部屋に侵入し、屋敷の見取り図を手に入れた。


 やはり書庫と表記された部屋が存在していた。

 そして今の僕はその部屋の前にいる。


「この部屋か・・・」


 僕はドアノブを捻り、押す。

 心なしかほかの部屋の扉よりも重い気がした。


 空いた扉の隙間から埃っぽい臭いがして僕は思わずむせる。

 今の僕には完全に扉を開け放つことはできない。


 だから自分の体が入られるほどの隙間分まで開き、そこに体を滑り込ませる。

 部屋の中はカーテンが閉まっているのか暗くてよく見えない。


 どうしようかと困っていると一つの案が浮かんだ。


「できるのか?」


 僕は試しにしてみる。


光よライト


 すると僕の手に光が生まれた。

 この魔法はお父さんたちがいつも使っていて見様見真似だったのだが何とかうまくいったらしい。


 暗闇に満たされていた室内を魔法の明かりが照らした。

 するとそこには天井に届きそうなほどに背の高い本棚がずらりと並んでいた。


 僕は内心ガッツポーズした。

 これでやっとこの世界の情報が得られる。


 そう思い、さっそく近くの本を手に取り開いた。

 やはり日本とは違うことが多いようだ。

 必要な情報とそうでないものを見分け、必要な情報だけを得る。

 そして次の本にと何冊も何冊も短時間で読み分けていく。


 ある程度の情報を得た。

 これで話は合わせられる。


 親に喋れることも公開して大丈夫だろう。

 やはり知識こそが力。



 次の日から僕の生活は格段に自由度が増した。

 甘えれば本はいくらでも手に入り、どんどん情報を吸収していった。


 その過程でお父さんの仕事なども知った。

 王の直属騎士らしい。


 僕はそのカッコいい響きに魅せられ、鍛錬を始めた。

 将来、お父さんのような風になりたいと強く思っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生の歪子(休載終わりました) @佐野 @sagachan1218

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ