私たちがいるこの場所はきっと世界の中の中の中の中の

リアルと変わらないような世界観を楽しめる、ネストというネットゲームに纏わる一連の事件を描いた作品。

という枠では治らない意図と構造があります。

ネストで暮らす少女、空子の描く小説のキャラクター。その空子を覗く現実(?)世界の麻耶。まるで世界を何重にも重ねて見ているような、映像的であり概念めいた立体性をもつ構造が素晴らしいです。

そういえば、そのような構造をしたものに名前がありましたね。なんでしたっけ?

今私たちは生きていて、だからこそこうやって飲み食いしたり小説を読んでいたりしているわけですが、それって本当のことなんですかね?

怪しげで薄暗い研究室。培養液に浸された脳みそにひたすら刺激を与えられて、あたかも自分が体験しているように見せられているのだとしたら。
どう思うのでしょうね。

リアルとは不確かで、世界とは壮大であるがもっと上の上の上の世界からすれば、我々の行為なんてシルバニアファミリーのおままごとなのかもしれませんね。

思わず自分自身の存在や立ち位置すらも考えてしまう。
自分自身の在り方を。

箱庭で踊りながら、私は小説を読んでニヤリと笑いました。

もしも自分が幻だったとしても。

やはり物語は面白い。

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