第4話 私の丁重な案内人②
一つのことを押しても、進まないのなら仕方ないということで、リッカは新しい話題を提供することにした。
「じゃあ、邪竜って何なの?」
ふむ……と静かに、黒髪の麗人は考えるしぐさを見せる。
「竜の谷をご存知ですか?」
竜の谷……竜使いが住むと言われる土地だ。
特に竜に乗った騎竜兵の狭い谷間を滑るように戦いが強く、難攻不落なことから、この国の領土もあそこの谷を国境線として分けている。
「あそこの人々は、また各地に卵を売ったりしに、世界を竜で巡ったりもするのですが。その旅をしていた人の一人が、邪竜が生まれた痕跡を見つけたのが始まりでしてね。」
「前に国境沿いに現れて、城を占拠したドラゴンがいたじゃない。あれと、何が違うの?」
リッカはふと昔の出来事を思い出し、話を挟み込んだ。
「野良のドラゴンとはまた違うのです。」
コホンと、一言置いてルドガーは勢いをつけて、話し始める。
「一つは大きさ、もう一つは被害の規模、最後は呪いというべきでしょうか。」
「一つ目の大きさ。邪竜は6つの最後の大きさでいうと、ギガント級……つまり、30メートルを超える規模の竜になります。」
「そして、もう一つの被害の規模。ドラゴンはその場にいる限り害はありませんが、邪竜は7つの厄災と言う周りに害をなす、異能力を持っているのです。」
「代表的なのは、再生能力でしょうか。そのドラゴンの種類によりますが、僕が聞いたことがあるのはそれです。」
「そして、最期の呪い。これに関しては、我が国の建国の歴史と深く関わっています。」
「話すと長くなるので今回は端折りますが、建国の父が邪竜を倒すのが始まりとなっています。」
「その邪竜の魂は流転し、時間をかけた後に新しい竜の肉体に宿ると言い伝えられています。」
「邪竜は倒される際に、国を滅ぼしに来る呪詛を吐いたそうです。」
「いわば、この国を建国した以来の宿敵なのです。」
「宿敵……ねぇ。」
思えば、リツカは建国の歴史に関しては詳しくはなかった。それを祝うような祭りには何度も参加していたが、そこで行われる剣技や劇を見る時間よりは、主婦内での手伝いに追われることの方が多かった。
「分からないわ。」
邪竜を倒さなければいけない理由も、自分の置かれたちぐはぐな立場も、余りにも理解が追いつかなさすぎて、その状況に肩をすくめるばかりだ。
それに対して、そうでしょうとも。と言わんばかりにルドガーは頷くのであった。
14歳の町娘がドラゴンを退治しに行かないといけなくなった話 春野 一輝 @harukazu
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