第3話 私の丁重な案内人
一言でいうと、黒曜石のナイフといえばいいだろうか。
好き好む人は好き好みそうな少年のような顔立ちとは裏腹に、どこか近寄りがたい瞳の輝きを持っている。
装飾の無い、頭と目に合わせたかのような黒の正装は、まだ着るには早いのではないかと思えるような堅苦しさを醸し出していた。
「今回、案内役と、邪竜退治にかかる会計や国への報告を務めさせて頂く。ルドガーと申します。」
「ええっと、宜しく。」
「ご緊張なさらず。僕は、貴方の執事を兼ねた護衛のようなものです。色々と言ってもらえれば、なんでもしますよ。」
にっこりと、微笑む柔らかい物腰は、美少年そのもののようだったが、発せられる空気は緊張したものだった。
そう、言うなら国に歯向かうものを許さない、番犬のような――。
「(印象と距離感からすると、最悪ね。)」
言ってしまえば、彼は国からの私の見張り役ではないのだろうか。
外側は気優しそうな童顔でカモフラージュされているが、実体は何かしでかさないようにするのと、私を保護しつつ国へ献上するための存在だ。
しかし、見張られる身としての私とは一体――。
「何でもといったわね……。じゃあ、言わせていただくけど、なぜ私が?」
「それは国王様直々のご説明があります。これに関しては、陛下御自身の口から直に……と仰せがありまして、我々の口からは何とも。」
「我々ってことは、陛下に会うまで連れてこられた理由はわからないってこと?」
いぶかしげに聞くリッカに、一人にこやかな表情を崩さず、彼は言った。
「お気持ちは分かります。突然、呼び出され不安なのも承知の上です。ですが、陛下自身が負うべき責任というものをお考えになられて下さい。」
どうもこれ以上は聞き出せそうになさそうだ。それくらい、固いものを感じた。
何でもと言いながら、丁重な口調で大事なことを教えないのは、内と外で分けながら生きている人間のよくやる生き方だ。
なまじ素で生きているリッカは、この少年のような麗人にいずれ対立する気配を感じていた。そして、一定の距離を置くべきだと考えたのだった。
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