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 エルシェントの遠征隊を待つことなく、ハリーは出発を決意した。出発前日には、もう一度ホルクと相談し彼の同意を得ようと部屋を訪れた。手紙が四年前であることをホルクに納得させた。彼は渋々と同意した。


 出発の日。

 まずは、ベータシェルターがどうなっているのかを確かめようと、隊員たちと話し合った。

 既に、先発隊のメンバーは到着している頃だろう。入れ違いになるかもしれないし、向こうのシェルターで合流できるかもしれない。


 ハリーは準備が整うまで、キャサリンと大喧嘩をした。キャサリンが受け取ったとされるフリージアからの手紙のことである。エルシェントがいないまま、彼女を危険な旅に巻き込むわけにはいかない、雪原をあなどってはいけない、死なせたくはないと激しく怒鳴ったことが原因だった。それでも彼女は聞く耳を持たなかった。彼は辛い顔で、眼を逸らした。


 今、この瞬間出発してしまったら、日の光りをみるまで帰ってくることはない。彼はそう固く誓った。長く険しい旅になるかもしれない。自分の身はなんとか守れるが、彼女まで守れる自信がハリーには持てなかった。唯一の気がかりだった。

 彼の気持ちを察したか、ホルクが無理やり彼女を引き離した。本来ならエルシェントと共についてくるはずが、こんなことになるとは、ハリーも彼女も思いもよらなかった。

 参加できない事を悟ると、シェルターの奥へと彼女は離れていった。暗闇に消えていく彼女を無言で見送ると、ハリーは目の前の現実に向かって歩き出した。

(生きて、きっと、ここに戻る)

 その言葉を胸に刻み込み、白銀の海原へと歩み始めた。

                           第一部 完

第二部に続く

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スノー・ディストピア 第一部 芝樹享 @sibaki2017

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