11
エルシェントの遠征隊を待つことなく、ハリーは出発を決意した。出発前日には、もう一度ホルクと相談し彼の同意を得ようと部屋を訪れた。
手紙が四年前であることで一刻も早く向かう必要がある、とホルクに説得を試みた。彼は渋々と同意した。
出発の日。
ハリーは、まずベータシェルターがどうなっているのかを確かめようと、隊員たちと話し合った。既に、先発隊のメンバーは到着している頃であった。入れ違いになるかもしれないし、向こうのシェルターで合流できるかもしれない。そんなことを考えながら、東の山脈までのルートを隊員たちとディスカッションを行う。
ハリーは準備が整うまで、キャサリンと大喧嘩をした。キャサリンが受け取ったとされる
今、この瞬間出発してしまったら、日の光りをみるまで帰ってくることはない。彼はそう固く誓った。長く険しい旅になるかもしれない。
自分の身はなんとか守れるが、彼女まで守れる自信がハリーには持てなかった。自分には、ちからが足りないのが唯一の気がかりだった。彼の気持ちを察したか、ホルクが無理やり彼女を引き離した。本来ならエルシェントと共についてくるはずが、こんなことになるとは、想像していなかった。
参加できない事を悟ると、シェルターの奥へと彼女は離れていった。暗闇に消えていく彼女を無言で見送ると、ハリーは目の前の現実に向かって歩き出した。
(生きて、きっと、ここに戻る)
「まず、最初の目的地は東の山脈だ!」
言葉を胸に刻み込み、白銀の大海原へと歩み始めた。
第一部 完 第二部へつづく
Snow Dystopia 第一部 芝樹 享 @sibaki2017
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます