作例2(難易度高め)

主人公 2.非人間(小型)

シチュエーション 2.複数対複数

状況 3.防衛、護衛、逃亡戦などの、受動的な戦闘

相手 3.非人間で『大型』な生物(ドラゴンなど)

武器 2.魔法などの攻撃手段


纏めると……、『魔法で戦う小型の生物の群れ』が『大型の生物の群れ』に『襲われる形』で戦う


……わーお難しい。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 『それ』は滅亡の危機に瀕していた。

 

 『それ』広義において虫とも言える。独自の進化を遂げ、より戦闘に特化した存在であるそれは大きくて牛ほど、小さいものは中型犬程度。

 姿は甲虫に類するが、カブトムシが角を備えるように、それは『砲口』を頭に構えている。放つのは弾丸ではなく、光弾や火の玉などの超自然的な現象、所謂『魔術』。

 この生物が常ならぬ経緯で誕生――何かの手が介在している――ことに由来する特徴である。

 一つの『女王』が中心に形成されるコロニーは、その砲口を持つ赤い個体と、鎧のように堅牢な黒い甲を持つ個体とが存在する。それらが王と、次代の子を守るために郡となる。

 基本的に森の奥で、ひっそりと暮らすそれらは今熱波に晒されている。


 『竜』

 生物の頂点とも言える存在で、空を飛び、火を吐く。体は大きく、小山にも例えられる。多くの知恵は然程高くは無いが束ねる個体、歳長く生きた個体は相応に知恵を備え人の賢者と言の葉を交わすのもいるという。

 ただ、往々にして気性が荒く特に縄張り意識が強い。今甲虫を襲っているのは、この群れが別の竜の群れとの縄張り争いに負けたからであり、腹いせ紛れの側面もある。


 しかし甲虫に知能は無くとも、そのような理由で滅ぼされる謂れはない。彼らには彼らなりの生きる権利があるのだ。

 この森、今は過半が焼き払われ荒野と化しつつある場所にいた他の生き物は全て木々とともに炭となった。

 それでも彼らが未だ生き残っているのは、その強靭さと自然にはない魔術を駆使するからであり、今まさにそれを以て竜の群れに対抗している。

 数にして百を超える個体の内約半数の盾となる個体が列を組み、その後ろから残り半分の鉾となる個体が火球や光弾を放つ。

 一撃一撃が大木をへし折るほどの威力とはいえ、竜の鱗を貫くには些か足りない。

 だが彼らには知恵はない、故に諦めることもない。この場ですべきことをそれぞれが果す。究極の軍団とも呼べる統制で、攻撃を続ける。


 竜はと言えば、三十程の群れが各々に空からは火を吐き、時に滑空しその爪で鷲掴んでは放り投げ確実に甲虫を減らしていた。

 流石に無傷ではないが、互いに消耗していく差でいえば優勢といえる。それに竜達には『プライド』があった。思いの外、手こずる相手ではあるがそのプライドが撤退を許さない。

 空を照らすように、下からは鮮やかな赤と白が放物線を描く。

 片や大地は燃え盛り、薪を焚べるように次から次へと木々が燃える。

 光弾が当たれば竜の鱗は傷つき、十も当たれば呻きとともに地に落ちる。

 火が甲虫の群れを炙っては、声も上げずに幾つかが動かなくなる。

 ごく自然な生物同士の闘いは休む間もなく続いていく。

 そうして戦いは続いた、果ては夜を越し朝焼けが戦場を照らす。


 甲虫は数を大きく減らし、残りは七匹。しかし竜はといえば残り十一匹。

 誇りが故に戦い続けた竜は半分以上が死に絶えた、それを只管に撃ち落とす甲虫。

 数で優れども、質で劣るそれは結局大部分を殺され、残ったのもまさに『虫の息』である。

 最後の抵抗むなしく、啄まれていく。一匹一匹と減りゆくそれらの最奥に、『女王』はいた。

 女王とはいうが、ただ大きな個体で種を残す中核というだけであり、特段強いというわけでもない。

 なので他と同じように焼かれ、今命を落とそうとしていた。


 残念ながら幼虫たちは既に焼けてしまっている、この非自然な生物はここで終わりである。

 疲弊した体力を戻そうと、残った竜が焼けた虫たちを食べる。


 所が竜が端から苦しみだした。やがて泡を吹きながら斃れていく。

 その虫は本来この世界にある筈ではなかった生物、故に常なる生物には毒となるのだ。

 ついに焼け野原には生きているものはいなくなった。

 

 それは理不尽に生み出され、理不尽に消え行く虫達の、僅かな抵抗と呼べるかもしれなかった。


 

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