第6話 金魚

水槽の中を泳ぐ彼女はとても綺麗だ。


揺らぐ水面に映える朱は、僕を夢中にさせる。


彼女のほとんどは大らかさで出来ており、ゆったりとその時間を使っていた。


たまにワガママな時もあるが、それもまた魅力の1つだと僕はそう感じた。


僕たちは多くの時間を共有し、いつも一緒にいたと言ってもおかしくはなかった。


僕は彼女を見て、彼女は僕を見ていた。


それでも僕はもっと彼女と一緒にいたいと感じ、今以上に彼女を独占したいと思い始めた。


彼女は今まで今以上にゆっくりになり、そしていなくなった。


彼女を失った僕は僕ではなくなり、何もかもを失ったに等しかった。


空っぽになった僕は、彼女が見ていた世界を見たいと思い、ゆっくりと水槽へと落ちていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

能ある鷹はクドリャフカ える @qweendoll

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ