番外・甘辛い空間
くっちゃくっちゃガムを噛んでいると、汚いという苦情がオレの耳に届いた。そいつは素っ裸のままタオルケットにくるまっている。無視してクッチャクッチャキシリトールくさいガムを噛んだ。
「終わった後にタバコは聞くけど、ガムは色気もへったくれもないわね」
「副流煙吸うよりくっちゃくっちゃうるせー方がいいだろ」
「でもねえ」
うるさい女にオレはキシリトールガムの紙をむしり取って口元に差し出した。そいつはパクッと平たく甘辛なガムを咥えて同じように噛む。恋人にわけてやるというよりスズメのヒナに親鳥がエサでもくれてやるようでムードもへったくれもない。
「こういうのって口移しとかでやるもんじゃないの?」
「そっちのがきたねーだろ」
ムードないのー、なんてガムを噛みながら再び寝っ転がった背中を見て妙に安心する。
甘さのカケラもねーけど、一緒にいておちつくからオレのそばにコイツは愛人──愛する人としているんだろうな。
お題・振り向けばそこに愛人
必須要素・ガム
即興小説劇場 豆腐数 @karaagetori
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