ぼく

11月30日。

あの日は積もって固まった雪に足を滑らせたきみに、

手を貸してあげた。

きみは少し赤くなり、

小さな唇からありがとうと、

白い言葉をくれた。

だんだんと雪が重くなり、

濡れたきみの睫毛が艶っぽく輝いて美しかった。

肌にのる雪に体温が奪われていく。

ぼくの左手からはきみの体温が熱く流れてくる。

この矛盾に、

ひどくいとしさを感じた。


きみの体温が雪に奪われていくのが嫌になる。

ぼくがきみの体温を全てもらうよ。


冬に出会えてよかったと思うんだ。

きみのあたたかさを知ることができたから。

ずっとこのあたたかさを抱きしめて、

きみの体温を奪っていきたい。


11月30日。

ああ、冬が来る。

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夏と冬 青葉芳 @aobys97

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