『ミチヲくん』

虚無

第1話


友人の引っ越した千葉の船橋というところに行った時の話しです。私は友人の引っ越し祝いの為、千葉県の船橋市という街に来た。残業で遅くなり、到着したのは終電の2、3本前だった。辺りは真っ暗だが、到着前に友人に電話したところ、北習志野という駅で降りて、駅を背に左に進み一つ目の角を左に曲がり直ぐ右に曲がるという簡単な道順だったので、友人の迎えも断わった。駅を降りると、街頭も数本しか無く、おまけに霧も出ていたので、私は早足で駅を背に左手の道をいそぎ足で歩いた。しかし、いくら歩いても、一つ目の角が出てこないどころか、街頭もかなり間隔が開いて立っている真っ暗な道になった…街灯の灯を頼りに歩くと、霧の中に子供の人影がみえた…子供は水色のキャップを目深にかぶり、胸に赤い刺繍でアルファベットのMと書かれた水色のTシャツにデニムの半ズボンに運動靴といういでたちの男の子で、手に持つメモ紙のようなものを見ながら、ゆっくりとこちらに向かって 歩いてきた。


男の子は、私の前で、ピタッと止まり『ミチヲ…オシエテ…クダサイ』と、か細くカスレた声で私に話しかけてきた。私は『僕、1人なの?、お父さんか、お母さんは?』と聞くと、男の子はまた、『ミチヲ…オシエテ…クダサイ』と私に手に持ったメモ紙を差し出して言った。私は、親が子供にでも解る様に描いてあるなら私にも解るに違い無いと、差し出されたメモを受け取り見ようと、スマホの灯を近づけると、バッテリー切れで、灯がパッと消えてしまったので、一番近くの街灯の下に男の子の手を引いて行った。街灯の下に着きメモ紙を見ると、やはり簡単な地図で街灯のある位置から見ておそらく今いる道をまっすぐ歩く様に矢印が付けてあり、ひらがなで『えき』と書かれた場所に赤で丸印がつけてあったのでどうやら、この子の目的地はさっき私が下車した駅のようだった。私は、男の子にメモ紙を返し、『いい、今居る場所からまーすぐ、向こうに歩いていけば、その地図に赤で丸がついてる駅があるよ、わかった?』と言うと男の子はメモ紙を食い入る様に見つめ、首を横に振った。私は、地図を指差して、説明してあげようと、しゃがみ、地図を指差し、男の子の顔を見上げた。


すると、私は想像を絶する光景を目の当たりにし、思わず悲鳴をあげ、その場にしゃがみ混んだ…男の子には、目玉も瞼も無く真っ黒な穴がぽっかりと2つ開いているだけだった……しゃがみ込んだ私に、男の子は『ミエナイノデ、目ヲクダサイ…ミエナイノデ目ヲクダサイ…』と連呼しながら、私の眼球めがけて手を伸ばして来た…私は思わず腕て両目を庇うと、腕に男の子の指がズブズブと私の腕に突き刺さっていくのがわかった……私は痛みと恐怖で、絶叫しながら男の子をつき飛ばし、全力で走ったが、男の子は『目ヲクダサイ…目ヲクダサイ…目ヲクダサイ…目ヲクダサイ…目ヲクダサイ…』と人間離れしたスピードて追いかけてきたので、無我夢中で走ると踏切が見え、遮断機が降りる直前だったが、私は全速力で駆け抜け踏切を渡りきった直後、電車が通過し、そこにはもう男の子の声も姿も無くなっていた……一体アレはなんだったのだろう、今でも腕に薄っすらと残る子供の指くらいの大きさの2つの丸い穴状の傷跡を見る度あの声が聞こえるような気がして、もう二度とあの駅には行く事が出来ません……

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『ミチヲくん』 虚無 @Chin25454

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