Desire

#3 Goddess


 俺は澪の墓を後にすると、彼女との思い出の地である泉を訪れた。相変わらず人が訪れているような気配は無い。――しかし、それは少し間違いだった。

 銀髪の少女が1人、畔に腰を下ろして泉の先を眺めていたのだ。

 俺も少女のことを眺めていると、少女は俺の存在に気づいたようで、後ろを振り返った。

 俺は息を止めた。


「――澪?」


 銀髪の少女は死んだはずの澪そっくりの人物だった。髪が銀髪というのを除き、澪そのものだった。

 少女は俺を見るなり、澪と同じような、頬が緩みそうになるほどの眩しい笑顔を作った。


「あっ、お待ちしておりましたよ武蔵さん」

「……どうして俺の名前を!」

「澪さんから聞きました。澪さんは命が尽きる寸前、澪さんはあなたに謝りたいと言ってしましたよ」

「れっ、澪の最期を知っているのか!?」


 俺は澪とよく似た少女に詰め寄る。


「落ち着いてくださいな。私は澪さんに託されたのです」

「何を託されたんだ?……ちょっと待て、お前は一体誰なんだ。澪が死ぬ寸前に傍にいたって言っていたよな?」

「そこも含めてお話しますよ。でも、現実離れしているのんで信じてくれないでしょうけど」

「……別に信じるとかはどうでもいいんだ。澪の最期を知っているのであればそれでいい」


 澪の死に関しては目撃情報が一切なく、殺人ということしか分かっていなかった。誰もいないこんな寂しい場所で死を迎えた澪の様子を、俺は知りたかった。


「では話を始めましょう」



「こんなところで何をしているんですか?」


 私は泉の畔で倒れ込んでいる少女に声を掛けました。


「……ちょっと、恨みを買っちゃったと言うか、何と言うか……」


 息を切らしながら話す少女の辺りでは、真紅の液体が雪をじんわりと溶かしていた。

 ああ、この子はもうすぐ死ぬな。手当しても手遅れだなと思った私は、女神として何かできることは無いか問いました。

 

「あなたは、女神様なの?……もしかして、月の女神様?」

「その通りですよ。私は月の女神です。良く分かりましたね」


 そう言って瀕死の少女に尋ねると、彼女は笑みを浮かべました。


「だって、まるで月みたいな美しい瞳を持っているんだもの」


 彼女はそう言ったのですが、「本当にいたんだ」と小さく呟きました。


「……ねぇ、最後に私の願いを聞いてくれる?」

「いいですよ。あなたの願いを叶えます。だって――女神ですから」



「というわけで、彼女のお願いを今、果たします」

「ちょっと待ってくれ」

「何です?」


 少女はきょとんとしてこちらを見つめる。今の話について、おかしいところがひとつも無かったと言いたげな瞳だ。




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聖夜に舞い降りた月の女神 四志・零御・フォーファウンド @lalvandad123

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