294話

 誠実への制裁を止める人が一人もおらず、誠実は綱引きの敗因としてクラスメイト全員から罰せられ、今は別なクラス同士が綱引きをしていた。

 

「さて、いきなり点数差が出来たぞ、誠実のせいで」


「そうだな、誠実のせいで出来たこの点数差をどうするかが問題だな」


「もう許してくれ……」


「てかなんだよ!山瀬さんに見とれて力抜けて負けるって!お前いい加減諦めろよ!」


「し、仕方ないだろ!好きだったことに変わりはないんだよ!」


「だが、綱引きのポイントは結局山瀬さんたちの赤軍が持ってちまった、俺達青軍も他のクラスが頑張ったから多少はポイントを獲得したけど、三軍の中では最下位だ」


「誰かさんのせいでなぁー」


「お、俺だけのせいにするなよ…」


「まぁ勝負はこれからさ、次は個人戦が続く、ここで点数を伸ばすしか方法はないな」


「そうだな、俺も200メートル走でさっきの穴埋めをしないと」


「俺は…パン食い競争だな」


「まぁぞれぞれ頑張ろうぜ!」


 かくして出鼻をくじかれた誠実達青軍であったが、綱引き後の個人戦に気合を入れて望んだ。


『続いての競技はパン食い競争です、皆さんパンを加えてゴールを目指しましょう』


「面倒だなぁ…」


「健! 勝てよ!」


「健! ビリ以外なら許してやる!」


「へいへい」


 やる気のない様子の健がレーンに並び、陣地から応援する武司と誠実に向かってやる気のない返事をする。

 

『位置について~よ~い…どん!!』


 スタートの合図と共に健は他の選手と横並びになってパンが吊るされている中間地点に向かう。

 

『さぁ!スタートしました!このパン食い競争には様々なパンが用意されており、吊るされたパンを咥えてゴールまで運んだ人が勝利になります!!』


 選手たちのスタートと共に実況の生徒が声を上げてルールの簡単な説明を始める。

 

『ちなみにパンは様々な物を用意しました!フランスパンにアンパン!フライパンに海パンなどなど、口に咥えずらい物も多数ありますので注意して下さい!』


「パンって付けばなんでも良いのかよ…」


 健の前の選手が早くも中間地点に到着、袋で隠されたパンを口で取ろうとする。


「えい!おりゃ!っと!よし、取った……ってなんだこりゃ!」


『あぁっと!早くも海パンが出ました!』


「何で若干湿ってんだよ!」


『ちなみに一度咥えたらもう変更は出来ませんので、それとゴールはそのパンを持ち主に返すことです!』


「そんなこと言われても持ち主って……」


『それは体育教師の郷田先生の海パンでーす』


「おぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


『はーい、一人脱落でーす』


「地獄かよ……」


 最初の選手のそんな様子を見ていた他の選手は中間地点でたじろいでしまう、どんな爆弾がこの吊るされた袋に入っているのか分からない。

 ここは慎重に行こうと、全員が他の選手の様子を見ていた。


「あぁ、考えてても仕方ねぇ!」


 健は早く競技を終えたい欲求から一番軽そうなパンを選び、口で取って中身を確認する。


「これは……」


『おぉぉぉっと!これは男子にとってはラッキーアイテム!女子の短パンだぁぁぁぁ!!』


「……」


「健!お前このやろう!」


「羨ましいぞ畜生!!」


 自軍で応援をしている誠実と武司は健の様子を見て野次を飛ばす。

 そんな健は短パンを加える。


『ちなみにそれは2年2組の女子生徒の強力になります、手を上げている女子生徒に返してください!』


 健はため息を吐いて短パンを加えて女子生徒の元に走る。


「はい」


「あ、ありがとう…」


「すんません、なんだったら洗って返すんで」


 口から短パンを取り女子生徒に渡す健、女子生徒は健の容姿に見とれ顔を真っ赤にしていた。


「い、良いのよ良いのよ!私が協力したんだし…」


「ならよかったっす、それじゃぁ」


 そう言いい走って戻る健。

 そんな健の姿を見て女子の黄色い声が飛び交う。


「きゃぁぁぁぁあ!」


「私の短パンも食べてぇぇぇ!」


「健君付き合ってぇぇぇえ!」


 そんな黄色声援を聞いても健は顔色一つ変えない、それどころか。


(この学校の女子、やべーのしかいねーじゃん)


 と若干引いていた。

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99回告白したけどダメでした Joker @gnt0014

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