第20話 合唱それと姉

 「私‥は」  

 急に合唱部への勧誘を受け、面食らう。

確かに、学校に残って歌くことはよくあった。

自分の気持ちを伝えるのが得意ではないけれど、歌は歌っていれば気分がスッキリして、自分の気持ちを乗せていけるような気がするからだ。


 クラスの皆が帰った後、誰もいない教室で海を眺めながら歌っていた。まさか聞かれていたとは思っていなかったけれど。

 私は、自分の気持ちを伝えるのが得意じゃない。でも、ちゃんと話したい。皆と分かり合いたい。引っ込み思案で臆病だ。

そんな自分が本当は嫌いだ。


 でも、秋人くんが、手を引いてくれた。

だから、私はそれに応えたい。

「私、合唱部に入ります」

気づけばそう、口走っていた。


 「ほんと!?嬉しいわ!

秋人が見込んだかいがある子だわ!」

ぱっと花が咲くように部長‥生田先輩は朗らかに笑った。

やはり笑った顔が秋人くんに似ている。


「じゃあ俺も合唱部に入ろうかな」

「そしたら、繭と一緒に帰れるし」


きまり!とニコニコ笑って秋人くんは言った。


「え、でも秋人くんって他に部活しているんじゃ‥サッカー部とか」


「え、俺なんも部活入ってないよ

サッカー部とか、野球部とか、手伝い行くけど

体動かすのたるいし、ほんとは苦手‥

合唱とか文化系の方が好きなんだ」



「え!?秋人部活してなかったの!?

言ってよね!最初から勧誘したのに!!」

  


え、生田先輩も知らなかったんだ‥


秋人くんは意外と秘密主義なのかな‥

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高校生、恋、それから夫婦 荻野目律(及川衣摺) @Kizuri_Oikawa

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