娘は預かった!返してほしければいくらか払え!

ちびまるフォイ

うそ、私の身代金低すぎ…!?

「ふふふ、誘拐なんてちょろいもんだな」


「学校帰りを狙って誘拐するなんて卑怯よ!」


「なんとでも言ってくれ。うちにも娘がいるんでね。

 どこがどう通学路になっているかを把握できて狙いやすかったのさ」


俺はさっそく誘拐した女の実家に電話をかけることに。

番号は聞いたので大丈夫だが、ボタンを押す手が止まる。


「……待てよ。いったいいくら請求すればいいんだろう」


「あんた何言ってんの」


「誘拐の身代金の相場っていくらなんだろう」


「わたしに聞かないでよ! 誘拐されるのもはじめてなんだから!」


「君のお父さんの仕事は? 一流の大企業に勤めてる?」


「わからないわよ。お父さん、絶対に自分の仕事の話してくれないし」


「ええ……」


ものすごい金持ちだったら強気の身代金設定でいけると思ったが、

普通の家庭ともなれば話は別だ。


「い、1億……かな」


「あんた何考えてるのよ!? そんな金額ぽんと出せると思うの!?」


「そ、そう? 高すぎる?」


「確実に値段交渉はいるわよ!」


「命を握られてるのに!?」


被害者のいいぶんはもっともで現実的でない金額を出せば、

「そんなの無理だ」

「なんとかしてくれ」

「時間がほしい」

「なんとかしてくれ」

の、すったもんだの応酬が予想される。


そんなことで時間を使って気付かないうちに特定されて逮捕されるのは避けたい。

取引はスムーズかつ迅速に行う必要がある。


「じゃ、じゃあ100万とか?」


「私そんな安い女だと思ってるの!? ふざけないで!」


「ええ!? 相場わからねぇぇぇぇ!!」


誘拐までしたのに軽い強盗と同じくらいの見返りだったら割が合わない。

高すぎず、現実的な値段を提示できるのがベストだけど……。


「あ! そうだ! 払える限界を聞いちゃえばいいんだ!」


「あんたどうする気?」


俺はやっとこさ被害者の両親に電話をかけた。


『もしもし?』


「ぐふふ、俺はお前の娘を誘拐したものだ」


『そんな! 娘を返してくださいじゃ!』


「俺もお前と同じく娘がいる身でね。鬼じゃない。

 身代金を払えば娘は返してやろう」


『いくら払えばいいんですじゃ!?』


「いくら? ふふ、それはお前が払える最大金額だよ。

 娘を返してもらうためには安い出費だろう?」


『じゃ、じゃあ……10億』



「じゅ、じゅ、じゅ、10億ぅ!?」


あやうく目が飛び出しそうになった。



『少ないですじゃ?』


「は、ははは、す、少ないが今回はそれで手を打ってやろう」


俺は電話を切ってガッツポーズ。

妙な語尾だったが、身代金は予想を大きく上回る金額だった。


「よっしゃーー!! あんた金持ちだったんだな! 知らなかった!」


「そんなわけないでしょ。うちはシングルファザーの家庭で

 お金なんて用意できるほど裕福じゃいもん」


「いやいや、でもあんたの父親は食い気味で10億払うって言ってくれたぞ。

 父親の愛に感謝するんだな」


「10億なんていったいどうやって……」



プルルルルル。



俺のプライベートの方の携帯電話がなった。


「もしもし?」




『貴様の娘を預かった。返してほしければ10億用意するんじゃ』

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