第3話

「それじゃぁ、これでパーティー完成ですね!今日は少し遅いですし、明日にでもクエストに出掛けてみませんか?」


「「クエスト??」」


「はい、ギルドのクエスト掲示板に依頼の紙が張ってあるんです。みてみますか?」


クエストがあると言うのは、オタクの俺からしてみるととても興味深い。どんなクエストがあるのだろうか。


「おう!みてみよう!」


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クエストの掲示板を見ると、 依頼書らしき紙がたくさん貼ってある。たくさんあって、何を見ればいいのかが分からない。が、そもそもその前に問題がある。


「読めない.....」


書いてある言葉が、日本語ではないのだ。

かくかくとした文字で、全く何が書いてあるのか分からない。


「美咲、何書いてあるかわかるか?」


「分かるわけないじゃない、馬鹿じゃないの?...でも、なんか昔の西洋の文字に似てるわね」


流石に馬鹿は言い過ぎだと思うが、確かに普通は読めるはずがない。しかし、昔の西洋の文字にに似ているということが分かるだけでもすごい。そういえば美咲は世界史の天才であったことを思い出した。


「これなんてどうですか?」


すると、レイアが一枚の紙を見せてきた。

でも、なんて書いてあるかさっぱり分からない。ただ、紙には何かの動物が書いてあった。


「...兎?」


「...う、兎ですか?これは

”クニークルスを捕獲せよ”

というクエストです。一番簡単なクエストで、報酬もなかなかなんですよ。まずはこれでどうですか?」


たぶん、書いてあるのは耳の形、体型からしてやはり兎であろう。こちらの世界では、

兎をクニークルス、とでも呼ぶのだろう。まぁとにかく最初は簡単の方がいいであろう。


「簡単ならそれで行こう!美咲はどう?」


「最初は簡単な方が良いと思うからいいんじゃない?」


「よし決まり!それじゃあ今日はとりあえず帰るとする...ぁ...」


俺は問題を発見してしまったのだ。深刻な問題を。


「...どうしたの?」


不思議そうな顔をして美咲がこちらを向いてくる。だってそうではないか。


「家...どうするよ」


「...あ...」


美咲もやっと気付いたようだ。この訳の分からない世界に、半日ぐらい前に来たばかりなのだ。家もくそもない。生活用品やお金すらないのだ。どうしようもないのである。野宿でもするしかないか、そう思っていた時、


「...あの...」


レイアが少し、もじもじとしながら話しかけてくる。


「良かったら、私の家に泊まりませんか?」


なんと、レイアが家に泊めてくれると言うではないか。


「いいのか?!」


「えぇ、もちろんです。...仲間...ですし... 」


家も何もない俺たちに、助けの手を伸ばしてくれる、正に女神である。


「うぉぉ...ほんと女神様... 」


「なにいってるんですか / / /さぁ市場にでも寄って帰りましょう!」


すると美咲はレイアに抱きついて、


「ありがとう!レイア!」


こうして俺たちはレイアの家に居候させてもらうことになった。


___________________


市場に寄り、そこで買った食料で夕食を作り、それを食べながら次の日のクエストの作戦会議をしていた。


「クニークルスは大きいわりには、すばしっこいので、騎士の連さんが前線で戦って、私と美咲さんが後衛で魔法で援護というのはどうでしょうか?」


「...ん?うさ...いや、クニークルスが大きい?小さくはないのか?」


俺が知っている兎、もといクニークルスは小さくて、とても可愛らしいものであり、どうしても大きい、というのには違和感が残る。


「クニークルスはだいたい、体長が1メートルぐらいありますと思います。場合によっては2メートルクラスもある、と聞いたことがあります。全然小さくはなくて、むしろがっしりしていますよ」


「に、2メートル?!俺が知ってるのは、こんぐらいの30センチぐらいだよ?!」


「まぁみてみればわかりますよ」


そうレイアは笑いながら言う。それにしても2メートルの兎、とても奇妙であるが、とても興味がある。


「まぁ、取り敢えずは、それでいってみよう!明日に向けてもう今日は休んでおこう」


そう俺はいい、みんなはそれぞれの部屋に向かった。それぞれの部屋と言うのは、2階にレイアの部屋1室があり、それ以外に2部屋空きがあったのを、俺と美咲が使わせてもらうことになったのである。


「それじゃ明日は頑張ろう!」


「そうね、がんばりましょう!」


「はい!」


そういい、それぞれは部屋に入っていった。


___________________



「さぁ、行くぞ」


両親が荷物を持ち、見知らぬ男に連れられ、何処かに行こうとしている。いつもの出掛けるときの荷物とは違う、少し多めの荷物であった。


「お父さん、お母さん、どこ...行くの?」


少し嫌な予感がした。何故かもう会えないような気がした。根拠はない。ただそんな気がした。


「ごめんな、レイア、お父さんとお母さんは少し遠くへ行かなくてはならないんだ。帰ってくるまで待っていてくれるか?」


嘘だ。この顔はお父さんがよく嘘をつく顔だ。


「レイア、お願い、必ず...すぐに帰るから...それまで...待っていてくれる?すぐに...かえってくるから...」


嘘だ。お母さんも嘘をついてる。このまま

別れてしまうともう絶対に会えない、そんな気がしてならない。


「やだ!レイアも行く!」


「だめ...なんだ。レイア、ほんの少しの間だけでいいんだ、待っていてくれ...」


「何をしている!早く乗れ!!」


見知らぬ男の怒鳴り声に、両親はビクビクとしながら、レイアに背中を向け、ゆっくり家を出て、馬車に乗る。両親が馬車に乗ると、男が手綱を引き、出発していく。


“もう... 会えないのかな...やだな...”


私は気付くと馬車を追いかけていた。ただ、がむしゃらに...


「おとうさーん!!!おかぁさーん!!!」


必死で呼びかける、が、馬車の方が圧倒的に早く、無情にも馬車の姿は見えなくなってしまった。過ぎ去った方を見ながら、涙を流した。

それから10年以上たっても、両親の姿がレイアの前に現れることはなかった。

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起きると目に涙が浮かんでいた。それを拭うと外からの月明かりで反射していた。時刻は夜中であろう。


“何回目だろう、この夢...”


両親と生き別れをして、この夢を何回も見てきた。レイアは生き別れしてから一人で生きてきた。ただ両親の帰りを待って.....


「明日から連さんと美咲さんがいる。一人じゃない。絶対にお父さんとお母さんを見つけるんだ。」


そう再び強い決心して、クエストに向け、また眠りについた。


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「ねぇ、この世界どう思う?」


俺と美咲は夜、俺の部屋で話していた。


「何よ、どうって」


「どうもこうもこのまんまのことよ」


「いや、なんもわからん。でも...」


「夢ではないことだけは...分かる」


あの光に包まれ、気付くとこの世界にやって来た。獣にレイアが襲われているのを見た。変な魔法らしきものも見た。何故か自分も使えた。全く現実味がない。だが、実際にこの状況を体験してる俺が一番わかる。


“これは夢ではない”


だとしたらどうすればいいのか。今のところは全く分からない。ただ流れに身を任すしかない。まずは明日のクエストのために準備をしておかなくてはならない。


「考えたってどうしようもないだろ、とにかく明日のクエストに向けて休もう」


すると、美咲の目には涙が浮かんでいた。


「ねぇ、連、私達もとの世界に戻れるのかな?」


オタクの俺からしてみると、この現象はとても面白い。だが、最終的には元の世界に戻らなくてはならない。しかし、どのようにしたら戻れるのだろうか?全く検討もつかない。


「あぁ、戻れるさ。とにかく今日は休んでおこう」


根拠はない。ただ戻れることを信じてやるしかない。ただがむしゃらに...


次の日


【クエスト】

“クニークルスを捕獲せよ!”

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幼馴染と異世界なんて! @fiziio034

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