第2話 レイア
目が覚めると大自然の中にいた。
”なんだこれ...”
辺りを見渡すと森、湖などの自然に恵まれ、森には木の実が豊富になり、湖は光で反射していて、とても幻想的で山紫水明な場所であった。
”あれ、美咲は?”
先程まで家の中で一緒だった美咲を思い出し、もしかしたら美咲もいるかもしれないと思い、探してみることにした。
森の中に入ってみると、動物が木の実を食べたりと、とても落ち着く場所であった。
そんな中、’ぽつん’と変な箱があるのに気付いた。
“何だこれ”
試しに開けてみると、そこには1本の剣が入っていた。
立派な物とはとても言いがたいが、一応使えそうで、試しに近くの枝を切ってみた。
“スパッッ!!”
「おーー!!」
意外と切れることに感心しているとどこからか、
「.......ぉぉおーーい!」
と女の人の声がする。声が聞こえる方をみると美咲であった。
「あ!美咲いた!」
この意味不明な現象だったが、美咲がいたことで少し安心した。
「なんで私達こんな所にいるの?」
「いやー、俺にもよくわからん」
よくよく思い出してみると、俺たちはゲームの休憩中に突然部屋のテレビが光り出し、その光に飲み込まれ気を失い、今に至っている。この不思議な現象を俺も美咲もよくわかっていない。
「で、なによそれ」
美咲は俺が持っている剣を指してそう言う。
「あーこれ、そこで拾った剣、かっこいいべ」
そういいながら俺は剣をぶんぶんと振り回す。美咲は呆れた顔をしながら、
「弱そうだね」
と笑いながら言った。
そんな話をしていると
“ウウギャャャャャャーー!!!”
と、とてつもない大きさの、何かが鳴く声がさっきまでいた湖の方から聞こえてきた。
“なんだ、なんだ?!”
そう思いながら美咲と近くの草むらまで寄り、覗いてみた。すると、湖の近くで青髪の女の子が獣に襲われていた。
さっき鳴いていたのはおそらくこの獣であろう。女の子は剣で応戦しているが、やや獣の方が優勢であった。
“キャャッッ!!”
獣が振り放った拳で彼女は吹っ飛ばされてしまった。獣はそのまま女の子に走り寄り、
もう一度拳を振り上げたその時、
『森の神デメテルよ、我に力貸さん!』
となにかを唱え始めた。
そして、
『花吹雪!!!』
そう叫んだ彼女の手が光り、そこから無数の光った花びらが放たれ、獣をとんでもないスピードで襲った。
「ぎゃゃぁぁぁぁー........」
魔法は獣に直撃し、その威力からか獣の周りには砂ぼこりがたっている。
女の子は力を使い果たしたのか、その場に倒れてしまった。
”大丈夫か?!”
そう思い近くに寄ろうとしたとき、
“ウギャャャァァーー!”
と、砂ぼこりが振り払われ、また獣が現れた。
獣は倒されていなかったのであった。
すると獣は倒れている女の子をまた襲いかかろうとしている。
「ちょっと蓮!その剣で助けてあげなさいよ!」
そう隣で見ていた美咲が言ってきた。
しかし、こんなボロい剣で勝ち目がないのは一目瞭然であったし、そもそもまともな闘いはおろか、喧嘩もほとんどしたことがない。
“獣?魔法?闘う?なんだこれ、こんなの夢だろ!”
そうすこしやけくそになった俺は、
「よーしやってやろうじゃねぇか!」
そう言い、袖を捲し上げながら獣に剣を向け、
““うぉぉォォォー!!!””
そう叫びながら立ち向かう。いかにも弱そうな声で叫ぶと、獣はすぐに俺の存在に気付き、何やら黒い霧の様な物を吐いてきた。
避けようとしたが間に合わず、まともに食らってしまった。
「グッッッ...」
と、後ろへ俺は吹き飛ばされた。
「痛って...あれ、動けない...」
今の霧で俺は全身を怪我をし、動けなくなってしまっていた。
すると獣は畳み掛ける様に俺の方へ向かってきた。
“だめだ...”
そう思ったその時、何故か体全身が熱くなり始めた。すると、身体が勝手に動き始め、剣を獣の方へ向けていた。
“?!?!”
するととどこからか、
---サァ、ウツノダ---
そう、どこかで聞いたことのある声色が聞こえてきた。しかし、打つと言われてもどうしたら良いのかも分からない。とにかく俺は全身に力を入れてみた。すると、体全身の隅々から、何かが剣へと注がれているのを感じた。そして、また俺は力を振り絞って、手に力を入れてみた。
すると、剣から巨大な光線が放たれていた。その反動でまた俺は後ろに吹っ飛んだが、放たれた光線は獣に一直線に向かい、直撃した。光線を浴びた獣は光の灰となって消滅した。なんだかよく分からないが、俺は獣に勝利したらしい。今の魔法のようなもので力を使い果たした俺は、また意識を失っていた。
____________________
目が覚めるとベットに寝ていた。
“なんだ、やっぱり夢か”
そう思った。
が、目の前の天井の感じがいつもと違う事に気付く。起き上がり、見渡してみると美咲の家でも俺の家でもない。どこか洋風な家の内装であった。
“ガチャッッ”
「あ、起きた」
そう言いながら入ってきたのは美咲だった。
状況がうまく読めない俺は、夢かどうか確かめるため、試しにほっぺを引っ張ってみた。
“やっぱり痛い、夢じゃない”
「なにやってんのよ...」
そんなことをしていると、美咲の後ろに人影があるのに気付く。よく見てみると夢の中で助けたと思っていた、青髪の女の子がいた。
すると女の子は、
「先程は助けていただきありがとうございました。私、レイアっていいます。」
よく見ると、年は俺たちと同じぐらいで、とても可愛らしい顔立ちであった。
「いや、全然!俺は藤井蓮っていいます」
ちょっとだけにやにやしていると、
美咲がムスッとした顔で、
「あんたさっきまで怪我してたでしょ。何で治ってるか分かる?」
と聞いてきた。
「えっ、確かに」
「レイアは『リカバリー』だっけ?怪我とかを回復できる魔法が使えるんだって!」
“魔法か...やっぱりあれは夢じゃないんだな”
そう思いながらレイアに
「ありがとう!」
そうお礼を言った。
レイアは
「いえいえ、助けてもらいましたし....」
と言いながら長方形の形をした、小型の機械を見せてきた。
「何これ??」
そう俺が聞くと、
「”フォンネ”っていう機械です。この国では年が17歳を超えるとギルドに冒険家として登録できる様になっていて、登録するともらえるやつです。私は最近17になって登録して、今は駆け出しの冒険者、ということになっています。試しに闘ってみようと魔獣出現エリアに出てみたらやられそうにやっちゃいまして....」
どうやらさっきまで俺と美咲がいた場所は魔獣が出現するエリアだったらしい。
力をつけるためにそのエリアにでた駆け出しの彼女が、やられそうになった所に出くわしたのが俺たちだった、という訳らしい。
するとレイアが、
「先程美咲さんに色々と教えていただきました。蓮さんも美咲さんもギルドに登録してみませんか?」
そう言ってきた。
フォンネというのもギルドというものも興味があったので行くことにした。
「おう!」
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家の外に出るとたくさんの人が行き来していた。刀や杖を持った人、馬車で荷物を運んでいる人、出店を出している人、とても賑やかな町であった。
「あれがギルドです」
そう言われ見てみると一際目立つ、とても豪勢な建物であった。
中へ入ってみると沢山の冒険者がいて、ここも賑わっていた。
そのままレイアに引き連れられ、ギルドに登録する場所へ着いた。
「では、こちらへどうぞ」
そのまま受付の女性に連れられていき、着いた部屋には一つの大きな水晶玉の様なものがあった。
「それでは、始めに基礎能力を測ります。その玉に両手をおいてください。」
言われたまま手をおいてみると、玉が光り始めた。
”すげー!こんなんで測れんのか!”
そう思っていると、
”?!?!”
と、一瞬測ってくれている受付の女性の顔が強ばった。
すぐに表情を戻し、
「手を離してください。次に魔力の能力を測ります。また両手をそこに置いてください」
”おー、魔力か!”
うきうきしながら両手を置く。
「ではまず、『水の神ポントス、我の力を示せ』
と唱えてください。次に火の神ヘパトス、森の神デメテル、闇の神エレポス、最後に光の神アルミスを順にやっていきます。」
”そういやこのセリフ、さっきレイアがいってたな”
俺は言われた通り、順に唱えていった。
水、火、森、闇と順に終えていき順調かと思われたが、
『光の神アルミスよ、我の力を示せ!』
そう『光』を唱えたとき、水晶が先程まで唱えてたときと全く違う風に輝き始め、
”パリリィィンン!!!”
と割れてしまった。
”うそぉ...”
受付の女性や近くで見ていたレイアが手を押さえて驚いている。
そのまますぐ、
「測定は完了しました。あちらで今暫くお待ち下さい。」
そう言われ先に受付の前の椅子で待った。
暫くすると美咲も測定を終え、レイアとこちらへ疲れた顔で向かってきた。
「終わったぁ...」
「どうだった??」
「まぁ普通だったよ」
そう会話していると受付の人が来た。
「能力を測った結果、蓮さんは騎士、美咲さんは魔導師となりました。こちらが説明書と能力などが記されている”フォンネ”になります。これから冒険者として頑張ってください。お疲れさまでした。」
そう紙と機械を渡し、戻っていった。
紙は騎士について、フォンネは名前、レベル、能力値、役割などが写し出されていた。
自分のフォンネを見ていると、近くにいたレイアが、
「...お疲れさまでした。あのー、よろしければ3人でパーティーを作りませんか?」
「「パーティー??」」
「はい、冒険者は一般的に三人以上パーティーを作り、冒険に向かうらしいです。私は最近冒険者になって、誰もあてがいないので...」
いきなり不思議な世界に来たが、何をすればいいのか分からない。勢いでギルドというものに登録したが、このまま冒険者になるのもいいと思い、俺は承諾した。
「全然いい!むしろありがたい!」
そう美咲もいった。
これで俺たち3人はパーティーを結成することになった。
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