天使のピース

実行委員で時間が遅くなったため、周りに人は誰もいない。


この生徒手帳は拾うべきだろうか…。

これを拾わなくても私を責める人はいない。

それに今拾っても、もう帰ってしまっているかもしれない


そうだったらここにまた戻そうかな

私がずっと持っているのも変だし。


なぜだろう。この時私の頭には【職員室に持っていく】という考えがなかった。


そんなことを廊下の端で3分くらい1人で考えていたが、結局拾うことにした。


生徒手帳を開くと 3年1組 霜山 響 と書いてある。顔写真を見るとそれは実行委員会にいた顔だった。


まだ間に合うかもしれない!!


私は急いで1組に向かった。

1組では女子と男子が談笑していたので、そうゆう雰囲気ではないことを確認してから入った。


「あれ?雪。どうしたの?」


よく見ると女子の方は同じ部活で仲のいい沙知だ。そういえば沙知も実行委員だった。

私は舞台係。沙知は展示係でグループが違うので気づかなかった。


「あ!霜山さんいる?」


「あー。あいつならついさっき帰ったよ」

どうやら今話している男の子は別の人らしい。


「え、本当?じゃあ早くしなくちゃ!沙知ありがとう!」


「え、ちょっとどうしたのよ!」

私は沙知の叫ぶ声を背に、下駄箱へ走り出した。


階段を駆け下りて、一階と二階の間の踊り場に着いた時、丁度それらしい男の子が出ていくのが見えたので思わず


「ねえ!!ちょっと!」と叫んだが

自分のことだと思ってないらしくそのまま歩いって言ったので焦って


「霜山響っていう人!!」などと訳のわからない呼び方をしてしまった。


霜山響さんはようやく気づき立ち止まった。


私は駆け寄って。左手を膝につき、右手で生徒手帳を突き出した。


「これ……廊下に…落ちてました。」

1組から下駄箱までずっと走ってきたので息を切らしていた


ふっ。


確かにそう聞こえた気がしたが、マスクをしていたのでどんな表情をしているか全くわからなかった。


彼は生徒手帳を手に取り、

「大丈夫?」と声をかけてくれた。

私が答えられないでいると


「誰かに聞いて机にでも置いてくれたら良かったのに、わざわざありがとう。」

と言った。


私はとても恥ずかしかった。

そうだ!その手があった。沙知に頼むこともできた。

はぁ。ここまでした意味。

私は恥ずかしいのを隠すのに


「いやあ本当ですね!私馬鹿で、全然思いつきませんでした!」と言って

ヘラっと笑って見せた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたの心が知りたいの すとらんべりー @stranberry

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ