感謝のピース

カララララ。

多目的室の重たいドアを出来るだけ音を立てないように開けた。どうか気づかれませんように!!

そんな私の願いはもちろん叶うわけがなく、担当の先生の鬼センの口からは

「どうした塔原。皆まってたぞ。15分間…。」


鬼センは学校で一番怖いとされていて、もとは扇條先生だがその怖さから鬼センというあだ名がついた。


うわ。よりによって担当の先生鬼センだ…。本当に最悪。____________________


どうした?と聞かれて友達と喋ってました。なんて言えるはずもなく。何とか絞り出した声で「すいません」と言った。


しかし、鬼センはなにも答えてくれない。 だから鬼センは嫌だ!


他の先生は謝れば大抵許してくれたり怒られたりするが。鬼センはずっとだまってこちらをら睨んで来るだけで言葉を発してくれない。


実行委員の皆も鬼センは怖いらしく、下を向いている人がいたり早く終わらせろよとでもいうような目でこちらをみてくる人がいる。


地獄のような時間だ。ほんとうに泣きそうになったそのとき。


「鬼セ…。扇條せんせー!この子のクラス4組でしょ?4組さ、ホームルーム遅かったからそれで遅れちゃったんじゃない?それに、ほら。一応走ってきたみたいだよ?」


向かって左側に座っていた短髪で、スポーツの出来そうな男の子が私を親指で指しながら言った。


言い終わってからくるりとこちらを向いて「ね?」と、目配せをした。


声に出すと泣いてしまいそうだったので私は頷くことしかできなかった。


「そうか、怒ってすまなかった。最初からそう言えば良かったのに」

鬼センはため息をついてからホワイトボードの前に立ち、私の席を指示した。


多目的室には机が縦に二つ。並んでいるが入って右側の席に座った。


すると、さっき助けてくれた男の子がちょうど向かいに座っていたので、先生がホワイトボードに書き始めたタイミングを狙って、ちょこんと頭を下げた。


男の子は机の下でピースをして少し微笑んで見せた。


実行委員会が終わると真っ先に助けてくれた男の子の所に行き、

「ほんとにありがとうございました!」

と感謝を述べた。


「どういたしまして!ほんと俺結構な勇気出したんだ。偉いと思わない?すごい怖かったよ。」


正直な言葉におもわずふっと笑みがこぼれてしまったけどしっかり感謝しなければと思い

「はい!すごいと思います。いつかお礼します!名前聞いてもいいですか?」

と言った


「俺2組の佐鳥 峻。お礼かー!楽しみに待ってる!」


佐鳥?なんか聞いたことあるなと思ったら東堂くんのグループにいる子か!

たしかに顔かっこいいもんな…。

なんかすごい人に助けられちゃった。


彼は入り口に東堂くんが待っているのをみて、私に「じゃあね」と言ってから

物凄いスピードで部屋を出て行った。


私も時間なので帰ろうと思い多目的室を出て下駄箱に行こうとした時。廊下の端っこに生徒手帳が落ちているのを見つけた。

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