第二話 再会

祖父の葬式から2週間が過ぎようとしている。


矢島 暁斗あきとは落ち着かない様子でリビングの掃除をしていた。大切な来客の到着までの時間が迫っていたのだ。

掃除をざっくりと終え、散らかっていた部屋を綺麗に片づけた。

普段は身内や友人が来てもここまで綺麗にはしない。特別なあの人だからこその行動だ。


掃除が終わってすぐにインターホンが鳴った。モニターを確認すると、あの人がもうそこまで来ていた。


「やっほー。もう来ちゃった」


カメラに向かって手を振る少女。人形のように長く美しい白髪、ガラス玉のような鮮やかな赤い瞳、ゴシック系のワンピースを着た彼女の名前はリーン。矢島家と長い付き合いがある大切な人だ。


アキトは返事を返し、急いで玄関を開けに行ったが、リーンは既に入ってきていた。


「お邪魔します。おー、ここが新居!」


リーンはまるで好奇心旺盛な子供のように目を輝かせていた。

乱暴に靴を脱ぎ捨て、部屋の主を後目にリビングへと向かう。


「いいなぁ、1人暮らし。憧れちゃうよー」


「あの…リーンさん?」


はしゃぐリーンを呼び止めると、彼女はハッとした表情で見つめてくる。


「ごめん、ごめん。久しぶりの外出だったから…」


「えーっと。お久しぶりです、リーンさん。2年ぶりですね」


「久しぶり、アッキー。会いたかったよ!」


そう言ってリーンはいきなり抱き着いてきた。彼女にとっては挨拶替わりだったと思うが、ロクに女性と交流の無い男にとってそれは瀕死モノだった。


「ちょ、ちょっとリーンさん!?。もう子供じゃないんですからそうゆうのはちょっと…」


リーンはすぐに離してくれたが、頬を膨らませて目を細める。


「えー、アッキーなんか冷たいなぁ…。もしかしてこれが思春期男子!」


リーンは嘲笑う。


「それにしてもアキトおっきくなったね!。前会った時は私よりちっちゃかったのにもう抜かされちゃった…」


リーンとの身長差は頭2つ分程広がっていた。


「ずっと、変わらないんですね…。歳も、身体も…」


アキトの言葉でリーンは一瞬、表情を曇らせる。

リーンは全く歳を取らない。

アキトが物心付いたときからリーンの容姿は何1つ変わっていない。十数年間、成長どころか老化もしていなかった。

この少女は普通の人間では無い。

リーンの周りの皆が知っている事だが、いざ目の前にしてしまうと、その事が頭から離れない。


「羨ましいでしょ?。これ私の特権だから」


微笑むリーン。だがアキトは素直に笑顔を返すことができなかった。








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漆黒のバライアス @fukamidori

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