小説リレー企画『魔王が体育館に現れた 第九話』

鮭さん

第九話 剛腕の過去


 1話目(ハイロックさん)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884288275

 2話目(亀麦茶さん)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884288746

 3話目(山吹さん)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884291664

 4話目(ぎんぴかさん)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884292350

 5話目(人間の触覚さん)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884294178

 6話目(雨天荒さん)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884293538

 7話目(@kurotataneさん)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884320493


8話目(西木草成さん)


https://kakuyomu.jp/works/1177354054884329354


「説明しろ、只野。」


「仕方ない。でも、私の口からより、剛腕先生からの方がいいかもしれない。どうぞ、剛腕先生。」


剛腕先生は喋り出した。悔しそうに、顔を歪ませながら。


あれは忘れもしない2日前。私は仕事を終え家に帰った。すると、性奴隷、大根女(だいこんじょ)と只野がセックスしていたんだ。


ああ、大根女っていってもわからないかな。私と大根女、出会ったのは七年前。趣味の大根栽培をしていた時。収穫の日。私は大根を引っこ抜いていた。


ぬっき、ぬっき、ぬっき、ぬっき


順調に抜いていった。愛情を込めて育てた大根が、私の手で土から巣立っていく。私は青空を吸い込んだような心地よさを感じていたんだ。


ぬきっ


ん、なんか変だ。変な形の大根?いや、大根じゃなくて、人だぞ。それもなんだか、とても美しい。


私はその人間に大根女と名付けた。なんせ大根と一緒に育って来た女だ、世間のことは何も知らない。これはチャンス、私は性奴隷にした。


「ゆまるらとぬよたせよとほ。」


「??????」


大根と育って来ただけあって、最初は大根語しか喋れなかった大根女。ああ、なんで大根語ってわかったかというとね、私は元々大根だったからだよ。でもせっかくだから、日本語を教えたんだ。


「大根、大根。」


大根を指差し、連呼した。覚えてくれるかな、と思って。


「ジャパニーズホワイトラディッシュ、ジャパニーズホワイトラディッシュ。」


大根女は何故か日本語は覚えなかったが、私がいった日本語を英語で覚えた。謎だったよ。狐につままれた気分さ。まあ、そんなことはどうでもいい。とにかく性奴隷としたんだ。私だけの、性奴隷。気持ち良い日々を過ごしていた。それなのに、ある日帰ったら、生徒の只野がセックスしている。


「只野君かい?」


「私は、只野君である。」


「やはりそうか。私の性奴隷に何をしているんだ。」


「あなたの性奴隷と、セックス、セックス、している。」


「そんな、私のものでしょう。なんで君がセックスするのよ。」


「あなたのものって、なんであなたのものなのよ。」


「だって私が引っこ抜いたんだもの。」


「あなたが引っこ抜いたからって、あなたのものなの?じゃあ私が引っこ抜いたら、私のものになるのかい?」


「それはそうだ。君が引っこ抜いたら、君のものになるでしょう。」


そう、そこで只野君は埋めたんだ、大根女をね、突然。そして、引っこ抜いた。大根女は大人しく埋められ、引っこ抜かれたんだよ。


「これで私のものだね。」


そこで私は気づいた、大変な過ちを犯してしまった、と。


「待ってくれ、待ってくれ、大根女がいなくなったら私は、私はまた性奴隷がいない暮らしに戻ってしまうよ。嫌だあ嫌だあ。なんでもするから許して下さい、許して下さい。」


私は号泣しながら頼んだ。


「なんでもするっていったな。なら一つ頼みがある。」


「なんであろうか。」


「同級生の勇者というやつ。あいつが気にくわない。あいつは俺の髪を毎日一本ずつ抜き、持ち帰ってゴキブリの餌にしているんだ。不快、不快。あいつをどうにかしてくれ。そしたら大根女はお前のものだ。」


という訳で私は自動車学校と、牛農家に通った。昨日だけ。その二箇所で学んだことを集大成させた結果、ミノタウルスになれたんだ。君を倒すためにね。先生たちは邪魔だったから、扇風機で飛ばさせてもらったんだよ。職員会議の時、扇風機をつけたらね、みんなぶっ飛んでいった。窓を破って、バリン、バリン。きっと今では中華街でチャーハンでも食べてるんじゃないかな。

私はこんな体になっちゃったから、普通の屋内にはいられないんだ。でも外だと目立って教育委員会がやってくるかもしれないからね、体育館にずっといたんだけど、、、




ポカーーーーン


みんな、ポカーーーーン、と聞いている。

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