0-2 いわくつきの街
三月の初旬ながらも気温は、真冬で路面が凍結するほどの純白の世界になっている街こそが鳴瀬京が生まれた町、天ノ塚市である。
天ノ塚市は東北の山沿いの位置にある街で、人口は4万人の数の人間が住んでおり、これといった有名な場所は神社や祠(ほこら)と言った昔から由緒ある神聖な場所を除いたらこれといった目だった場所はなく、強いて言えば、二、三年前に出来た巨大なショッピングモールでしか有名な場所がない街だ。
京は、日和と合流すると揃って、登校する前にとある場所に向かう、道中、粉雪が降るなか、道路には、何か事件が起きたように数台のパトカーがサイレンをうるさく鳴り響いていて、それを少し気にしながらもある場所に向かう。
それはこの街の行きつけのとある喫茶店で、朝食を食べることが、この二人の日課だ。
二人とも両親は、朝早く家に出掛けて誰もいないので、朝食を作るという面倒を軽減するためにいつしか知り合いの店で、食べることになったのだ。
京と日和の前に立ち、開店時間である7時を過ぎたことをスマホで確認すると店に入る。
ドアを開けると、ドアベルがカランカランと響くと同時に外の素肌を出すだけでくしゃみが出るくらいの寒さと比べると汗が噴き出るほどの暖房がガンガンと聞いていた。
店内は、80年代の洋楽が流れており、その中のカウンターになぜか静寂にテーブルの前で酒が入ってるグラスを握ってだらしなく酔いつぶれている謎の客がいて、その前にいる店長らしき若い男が笑顔でおもてなしをする。
「あら、京君、日和ちゃんいらっしゃい」
「敦さん今日もいつものをお願いしますね。って京君、挨拶!!!」
「・・・・・・・・別にいつもの事だからいいだろ」
京は相変わらずの気だるさで軽くあくびをし、それを見た日和は京のため息が映ったように息をはいた後、暑苦しい上着を椅子にかけ静かにカウンターの酔いつぶれてるような客の隣に座る。
「ZZZZZZZZZZ・・・・・・・」
「はあっ・・・・・・・・」
京の隣にいる酔いつぶれた謎の人は、見た所、30代くらいの女性で、その人は、鈍いいびきをかぎ、口からアルコールの臭いとそれを含めて加齢臭に似た独特な匂いがする。それを間近に見た京は、呆れながら、ゆさっゆさっと起こそうとする。
「おい、叔母さん・・・・・・起きろ」
「・・・・・・・・・・」
京が何度も起こそうとするが、その女性は深い眠りについて微動だにしない。それに対して京は、軽く舌打ちをする・・・・・
「ちっ、めんどくせーーーーな・・・・・・・」
「ほら、与羽(よはね)先輩、京君が来たから起きて下さいよ。でないと、今までのツケをこの場で払わせてもらいますよ」
ピクッ!!!!
敦さんの一言でその女性は、跳ね上がるように起きだし、キョロキョロと周りを見渡し、あくびを大きく店内に響かせた。
「ふぁああああああああああああ・・・・・・・・・・んだ?・・・・・」
女性は、ぼさぼさとふけがとびちらしながら、黒縁のメガネをかけ直し、
「先輩・・・・・・絶対わざと寝てたでしょう?」
「あ?何言ってんだ。お前わたしになんか言ったか?」
寝ぼけながらも敦さんに睨んだ。
彼女は、鳴瀬 京の叔母の与羽 小柳(よはね こやなぎ)だ。
京の母方の姉で、見た目は20後半に見えるが、今年で38になる人だ。
あの年齢に比べて若く見えるのは、前職は、自衛隊員で、敦もそこでの後輩で、日々の訓練で培った適度な運動で若く見られるが、性格は、喧嘩っ早く、酒癖悪い、時間にルーズすぎる、などのだらしなさが見られる。自衛隊の仕事を辞めた現在は、名門校の教師をやっている。普段はその名門校の寮で下宿してるが、極たまに後輩の店で飲んでいるのだ。
「いえ・・・・・・なにも言ってませんよ。僕のことより可愛い甥っ子さんが来ましたから、挨拶したらどうですか?」
「あ?京がいるってことは、今7時じゃねーか。てめぇなんでそれまでに起こさなかったんだよ」
「何度も起こしましたけど、結局それまでに起きないのはどこの誰ですか・・・・・・まったく昨日は無理に飲まされて一睡もしてないんですよ。それなのにこれから仕事だなんて嫌な気分ですよ」
敦の顔をよくよく見ると目の下にクマが見られてて、寝不足なのは分かる。
「あーーーー、すまんすまん。その借りは、いつか返すから・・・・・」
「なら、今までに貯まったツケを返してください」
「それはまた今度な・・・・・」
小柳叔母さんは、誤魔化すように胸ポケットから煙草を取り出し、目を逸らしながら、煙草を吸う。そして、視界は京達の方に目を向ける。
「話は戻すとして京、受験は合格しそうか?」
「・・・・・・・まあまあだな」
「それはないだろ。そこは余裕でしたといえねーのかよ。大体おめーならうちの推薦枠に入れただろーになんで断って地元の公立選んだとか私には分かんねーな。幼馴染の日和はすでにそこに受かってんのによ・・・・・・」
「日和と俺を一緒にするな。こいつは日常的にポカをやらかしまくるマヌケだが、一応学年トップの秀才なんだぞ。月とすっぽんだ。」
ちょっとそれどういう意味?」
話を聞いた日和は、ムッと睨みついた。
「当り前のことを言っただけだ。今朝だって俺を起こす時、縞パンがちらっと見えたぞ。少しは女性らしさを持て」
「なんでそれを今言うの」
「それだけじゃない。お前は料理する時は何時まで経っても塩と砂糖の区別は出来ないし、中一までお漏らしするというお前のボケ武勇伝は止まらないんだよ」
「あーーーーーーー!!!!!言わないで」
日和は黒歴史を思い出したように、耳を塞ぐが、京はそれを止めようとしない。今朝勝手に人の部屋に入った仕返しの如く日和の心を抉っていた。
それを見た小柳叔母さんはくすりと笑う。
「おーーーーーーいいね。朝からいいもの見せてもらって。お前らいっその事付き合えよ」
「その事だけど、京君すでに、彼女をいたらしいですって」
「ぶっ!!!!」
それを聞いた叔母さんは煙草を吹き出した。
「おい、京。てめえどういうことだ?そんなの聞いてないぞ」
「おや、京君。先輩に言ってなかったのかい?」
敦は、すでに知ってたので、事実知ってなかったのは、叔母さんだけでそれを聞いたら突然に京を掴みかかった。対する京は、抵抗する気もなく、なぜ叔母さんがキレてるか分からないような顔をしている。
「なんだよ叔母さん。いて―じゃねーか」
「いてーじゃねーよ。なんでそれを真っ先に私に言わねーんだよ」
「別にいいだろ。そんな事めんどくせーな」
その態度を見てオバサンは、朝っぱらながらがガンガンしそうな頭を堪えて怒りを爆発しそうとする。
「てめーーーな!!!!」
「はいはい、そこまで。いいんですか?先輩もうすでに5分を過ぎてますよ?京も仕事ですよね?」
敦は落ち着きながら、時計に指をさす。時間は既に7時5分だ。それを見ると直ぐに京の襟(えり)を放し舌打ちする。
「チッ。そろそろ出かけるわ」
叔母さんは、また煙草を取り出し店に出ようとする。
「柳さん。外雪が降ってて路面が凍結してますよ」
日和が注意するのは無理もない。小柳叔母さんがこれから出勤する学園は普通だとこの喫茶店から40分もかかり、路面の凍結や朝の通勤での渋滞でそれ以上かかる。学校での出勤時間はだいたい8時頃なので、その酒臭さとだらしない身だしなみではどう考えても生徒の前に出るには、いささか不快だと思われる。
「心配すんな。わたしの操縦テクなら、多少の凍結ならなんとかいけるし、近道してかっ飛ばせば、30分は行ける。加えて、すぐに学生寮でシャワー浴びて着替えて歯ぁ磨けば楽勝だろ」
「先輩、それはいいんですけど。後点数いくらあるんですか?後、白バイに止められたら確実に免停ですよ」
「あーーーーー大丈夫、大丈夫。ナンバープレートも隠してるから振り切ればなんとかなるだろ」
教師が言ったとは思えない衝撃的な爆弾で一同は、冷めながらも、小柳叔母さんは、厚着を着て外に出ようとする。
「先輩、今度はいつ、戻られるんですか?」
「この時期だからな。当分は、ここには戻らない。」
そう言いながら、だらしない身だしなみながらもクールに煙草をふかしたが吹き込む冷風によってそれは消えていった。
そして一歩踏み出し出ていく前に可愛い甥っ子に目を向けた。
「おっと、その前に、京!!!」
「んだよ。改まって」
「いつも言ってるが、無理な人助けはするな。そんなヒーローごっこは、後で自分を破滅するぞ。それだけは、肝に銘じとけ」
「・・・・・・・・」
そう言った後、煙草をふかしながら、外の出て仕事に出た。店内は、外の空気で一瞬冷風を感じたがすぐに収まった。
「さぁてと。先輩が去った所で、二人ともいつものでいいよね?」
「はい」
「ああ」
そして、小柳叔母さんという台風は去った所で、京達は改めて注文を言った。
「はい。いつものランチセット。コーヒーつきね」
「待ってました」
敦が出したのは、オムレツ食パン、サラダにコーヒー等が付いた390円の朝食ランチセットだ。京達は、学校を行く前でここに寄る時はいつもこれを注文をしている。
「どう、京君目が覚めたかい?」
「ええ・・・・」
京は、この喫茶店で自慢のコーヒーをすすると、眠たげだった彼も徐々に目を覚めて来た。店内もいつの間にか客が賑わってていつの間にか喫茶店内は、いそがしくなったので敦は、気を紛らわそうとテレビを付けて気を紛らそうとした。
「大丈夫ですか?敦さん。休んだ方が・・・・・・」
「いいよ。日和ちゃん。まだいける。それに先輩の悩みを聞くのが僕の仕事だからね」
他の店員も出勤する中敦は、小柳叔母さんに昨晩から付き合った影響で、疲労は見られる。その内容は、昨晩の合コンで叔母さんは、お目当てのイケメンに告白をしたのだが、勿論丁重に断ったりと結果は散々な為に、閉店間際の喫茶店にフラフラと入ってた所を敦がきいてたようだ。その愚痴を永遠と聞く中で、アッと居間に夜が明けたようだ。
敦は疲労が困憊しながらも店の為に無理をし、店が落ち着くまでは、頑張りたいと一身している。
その話を聞いた日和は、朝から悲惨に感じられていた。それに対して京は、学校が始まるまでテレビにかかってるニュースをぼんやりと見ていた。勿論日和が話しかけようとしてるのを無視しながら・・・・・・
「敦さん大変だって分かってる?ってちょっと聞いてる京君?」
『速報です。今朝4時頃、天ノ塚市の河川敷で男性のバラバラ死体が発見され・・・・・・・』
「おい、これ近所じゃないか」
「ほ、本当だ。道理で朝っぱらからサイレンがうるさいと思ったんだ」
京達は、そのニュースに食いつくように目をやる。それもそのはず、その河川敷は、京達の住まいやこの喫茶店の近くにある。馴染みのある河川敷だ。今朝からサイレンがうるさく響いていたのは、敦達を含めて常連は知ってたがこんなに近くに事件が起こってるとは思わなかった。
「また・・・・・・だね」
「そうだな・・・・・・。今年で何度目だこれ」
そう疑問に思うのは無理もない。去年の秋に入って、この天ノ塚には、先のバラバラ殺人や突然の行方不明者や爆破事件といった奇妙な事件が相次いでおりその連続怪奇事件は、未だに犯人は見つからず特定は出来てないという、住民にとっては警察の無能さに不安感と同時に苛立ちを抱いている。
ここに住んでいる住民は偶然だと思っているが、一部の人間はこれを都市伝説といったでっち上げを作ったりしたりしてるのだ。
「そう言えば、うちのクラスの守屋の親父さんまだ見つからなかったようだな」
「うん。それもそだけど、最近こんな奇妙な事件が続いてるから下校時間も早くなってきたから、早くこの物騒な事件を収まって欲しいね」
「確かこの一覧の事件って、どれもバラバラじゃね?」
京はそう疑問気に思う。それは、この事件には、行う事件現場や殺害方法や殺された人といった一致するものなどなく、規則性などなかった。
「うん。そう思うね。敦さん何か知ってる?」
「・・・・・・・・僕もそう思って警察関係の友人に聞いてみたけど、進展はあまりないみたいだよ」
そう言って敦は、お手上げのように首を振る。
「だから君達もなるべく外に出ない方がいいよ。もしもの時は僕が、学校に向かいに来てあげるから・・・・・」
「ありがとうございます敦さん」
「・・・・・・・・・」
「さぁてとそろそろ学校に行こうよ京君」
日和は、最後の一口を終え、お金を出し、席に立とうとした時未だに京は何かを考えてた。まるで、その事件についてを深入りしたいように・・・・・・
「京君?」
「あ?なんだ。・・・・・・そ、そうか学校だったな」
日和の呼びかけでようやく気付いた京は、お金を払い、朝は8時ちょうどに店をでることになった。あたりは、相変わらずの白い世界に覆われて視界が霞んでる中、京達は周りを警戒して登校することになった。
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