あとがき

解説 フィクションとノンフィクションの境界

 各話で取り入れた設定と現実の対応について少し説明をしておきます。


第1話「高校1年生のミアキと図書委員会2026」:


コバヤシ丸:

 スタートレックTOS映画版第2作の「スタートレック2:カーンの逆襲」内の演習シナリオ内で登場する架空の船。エンタープライズの護衛対象となっている。カーク艦長の一面を描いた上手い設定だと思う。




第2話「僕がここにいる理由」


単位制高等学校:

 個人ロッカーが廊下などにあり、ホームルーム・クラスでは毎日2限目終了後と終礼時にショートホームルーム、週1回1時間のロング・ホームルームを行っている他は大学と同様に講義のある教室へ移動して受けている。

 兵庫県の場合はショートホームルームは終礼時のみらしい。神奈川県は午前にも行っているような例を見かけたのでそちらを採用した。




第3話「選書会議は踊る」:


新刊委託制度:

 作中、新刊委託制度が残っている事を前提で書いてます。新刊委託とは新刊書籍が刊行された際に取次・出版社が出荷する書店を決めて注文に依らずに売上を計上して書店に納品するもの。一定期間(3ヶ月とも言われる)内であれば書店側は返本自由とされてます。一般に書店利益20%で低いとされてますが、このような制度があるから出版社側の利益率の方が大きく設定されていると思うのですが、新刊委託がなくなれば書店の利益率を大きく出来るかも知れません(なので今の新刊委託の仕組みが維持されない可能性はあると思います)。


スパイマスターの本:

 中で出てくる問題の書はル・カレみたいな人だと思っていただければ幸いです。


神奈川県立高等学校の図書資料費:

 図書資料費どの程度予算措置しているのかなと思って探していたら総額は下記に掲載があった。

平成28年度(平成27会計年度)地方教育費調査結果

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f6559/p1107032.html

全日制県立高等学校(139校) 図書購入費 21,424千円=154千円


 ある神奈川県立高等学校(全日制。27学級1000人規模)の保護者向けの費用説明ページに「生徒会費・教育振興費・図書費・特別活動援助費・環境整備費・緊急対応基金・保護者の会(一括納入)」20,400円の中に「図書費」があるので、こういう部分から補助されているらしい。


 また掲示板では下記のような書き込みもあった。

「県立高校が今年度、県から支給された図書購入費は20万3000円と、普通科の高校ならどこも同じ金額です。 そして、PTA会費による図書購入費用が生徒数によって、差が出ます。 図書だけの購入費用だと、80万円~150万円位です。 」(2012年6月投稿)

https://www.inter-edu.com/forum/read.php?10,2582227


生徒数にもよると思いますが上記にあるように80万円〜150万円というのが当っているのだろうと思う。


(参考)県立の図書館と県立高等学校による連携協力事業 -神奈川県内高等学校図書館相互貸借システムを中心として-

https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/information/pdf/kiyou010/kiyou010_01.pdf¥




第4話「合宿旅行」


権兵衛峠ホテル:

 権兵衛峠は実在します。木曽側の国道19号線から伊那・高遠に抜ける国道です。近年トンネルが開通して楽に通れるようになりましたが、ホテルは実在しません。あれば見晴らしは良さそうなんですが。


えんぱーく:

 塩尻市民交流センター。塩尻市立図書館などが入居する複合施設です。最大収容冊数などは実際の数字で書いてます。蔵書規模は将来の予想として書架がある程度埋まったという想定で書いてます。


伊那市創造館:

 上伊那図書館の建物を改築した歴史資料展示などを行う施設。上伊那図書館は戦前に建てられた当時としては先進的な図書館で当時の書庫などが残されていて見学が可能になっています。敗戦時の県から届いたという命令書の話は実話。実際に展示された事があり筆者もその企画展で見てます。


国鉄松鹿線:

 徹頭徹尾、実在した事はありません。大元は北海道のJR札沼線の新十津川から先の廃止区間の鉄道橋(現水道橋)についてあった事を元にしたフィクションです。

 小渋ダムは実在ですが当然国鉄の路線があったなんて事はありません。急峻な地形で山の東側(大鹿村側)は中央構造線の谷筋にあたり地質がもろいと言われている地域なので、アルプスの地下を通そうとしているリニア線が初めての本格鉄道構想じゃないでしょうか(ナローゲージの森林鉄道は遠山郷の方であったみたいですが)。


青春18きっぷ:

 現在存在していますが10年後あるかは謎ですね。もともと有人改札でスタンプを押して使用するという切符ですが、その有人改札がなくなりつつありますし。JR西日本でも都市部なのに無人化に近い運用に変えた所も出てます。そういうところだとリモートで精算など行うための専用精算機が置かれてますし。


カシダス:

 実在する図書館検索サイト「カリール」みたいな図書館検索サービスサイトを想定しています。きっとこのサイト運営会社も岐阜県東濃地方にあるのだと思います。


小説家しりとり:

 宇能鴻一郎うのこういちろうを入れようかと思ったのですが断念。あれな小説を多く書かれてますが、芥川賞を取っていてグルメエッセイは面白そう。読んで良ければ取り込もうかと思いましたが最寄り図書館でもほとんど置いていない。また機会上がれば取り上げたいなあとは思ってます。

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連作短篇集)高校1年生のミアキと図書委員会 早藤 祐 @Yu_kikaze

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