ダンケルク撤退から数ヶ月後の冬。国内の士気を鼓舞するための映画企画が立ち上がり新進若手の女性脚本家があるプロダクションのコメディ脚本家師弟コンビの仲間となってダンケルク撤退戦で兵士達を連れ帰ったという双子姉妹の話を映画にしようとする。
映画の中ではシェークスピア「ヘンリー五世」聖クリスピンの日の演説が引用される。「我ら幸いなる少数」戦いに臨む時、将来この戦いに参加していたことを羨ましがられるであろうという王の言葉。そして映画を作るという事は小さな雪の塊を雪だるまとして大きくして目や鼻をつけてやる事でもあった。
米国の参戦前ながら英国にレンドリース法を作って基地の租借とバーターで駆逐艦の貸与が始まっていたあたりで独空軍の空襲が激しかった頃の物語。あっけなく人が死ぬ。そして主人公は仲間にその事を指摘されるような時代にフィクションを創造する。主人公は自身に起きた出来事を「リテイク」したスクリプトを書いてみせた。でもそれは作中の現実が更に書き換えてしまう。物語る事の意味は何なのか。隠喩に富んだ作品でもある。
そんな展開の中であるシーンで主人公は悪ふざけしあって幸せな瞬間があって。そこであれ?それ良いの?と思ったら、その事にちゃんと意味はあって泣いた。彼女への貴重な贈り物になっていた。あのシーンを最後に見せるためにあるような作品。素晴らしかった。