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「否定と肯定」

ホロコースト否定論者を批判する記述をホロコースト研究書に入れていたらその相手から名誉毀損で訴えられた。しかも裁判管轄地は英国。
その本を出した出版社はペンギンブックス。英米に拠点を持つ屈指の出版社の一つ。その英国法人を足がかりにユダヤ系アメリカ人の女性歴史学者を訴訟へ引きずり込んだ。

2000年に始まった裁判。歴史学者は自身が相手の主張を否定しないと訴訟に勝てないと言われていて意に沿わないように思えた法廷戦術が弁護団から示されていた。激突する意思。そして弁護団がどこまで先を見通していたか知りチームとなっていく。
1ヶ月に及んだ訴訟の行方はーーー。

というあらすじの映画です。実際にあった話でノンフィクションは訴えられた歴史学者が本を出されていてハーパーBOOKSの文庫で邦訳が出ました。

本作リーフレットにホロコーストがあったかどうかを問うような文言が入っていて物議を醸している。見れば分かるのですがホロコーストはあったし、それは議論の余地のない事だというのが歴史学者と弁護団の共通認識。その上でなかったというでっち上げで攻撃をしてくる歴史修正主義者の訴えに根拠がない事を示そうとしていたので、映画を見ていればこんな説明をつける事は考えられない。

タイトルは原題が「Denial」。邦題はこれを「否定と肯定」としてこれも不満を持っている向きは多い。ただこちらはちゃんと映画を見てないとつかない命名だと思う。「両論併記」だったら「肯定と否定」になったはずの所を倒置させて興味を引くようになっている。そういう意味で考えれば「肯定」は歴史修正主義者と戦う事、和解しない事の肯定なんだろうと思う。

東京都内は1カ所ですが愛知県は3カ所、岐阜県も設定があり全国的にはそれなりに上映されてますので、機会があれば是非。私は2回も見てしまった。考えさせられるところが多い映画だと思う。

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