第2話 ありがとう、そして愛してる
今、祐樹の気持ちはとても複雑である。
いじめられているのに、実花に恋をしてた。
ただし、今は全くいじめは受けていないので、安心していた。
しかし、ある日、実花と一緒に手をつないで帰っていた時のこと。
背後から、不良に、二人とも同時に後頭部を思いきり殴られた。
祐樹は、必死に、実花を守ろうと立ち向かった。まるで今までいじめられていた時とは別人のように。
「おれの彼女を傷つけたな!謝れ!」
正直、それを言っているときも痛みが治まらなかったが実花を守ろうと必死だったから言えた。
実花はもう何もできないという顔でいた。
しかし不良たちはその言葉を聞いて、鼻で笑った。
「謝るとかできるわけねぇだろ~!それに、彼女なんてできちゃって、マジ笑えるわ~!お前みたいなカスが、彼女を守れるわけねーだろ~!」
そのあと、祐樹だけを殴ってきた。
実花は何もできない。
しかし祐樹は、恐ろしい力を隠し持っていた。
なんと、武術の達人だったのである。
不良たちに殴られまくって、さすがに達人の祐樹も負けるわけにはいかないと、ようやく隠し持ていた力を外に出したのである。
不良たちは五人いたが、祐樹はそれを全く恐れることなく、全員をこれでもかと言わんばかりにボコボコにしたのである。
不良たちは倒れこんでいた。そしてすぐに今にも倒れそうな足取りで退散したのである。
「祐樹、そんな力を隠し持っていたなんて。」
実花はこちらを睨んでいた。
「これはまずい」
と思って、逃げようとした。しかし、実花は一気に睨みからかわいい笑顔に表情を変えて、
「大好き!私を守ってくれてありがとう!」
と言って、正面から、目を見ながら抱きついてきた。
「ほんとに、いい人だな。実花は。」
実花はその瞬間、笑顔のまま顔を真っ赤にしたのである。
それに、頭を少し横に傾けていたので愛おしくてたまらなかった。
「これからも守ってください」
急に敬語になり、しかし、やはり笑顔のままだった。
「もちろんだよ」
祐樹は実花に誓った。
その誓いを絶対に裏切れない。
「一緒に帰ろう!」
と、二人が同時に言った。
笑い合う。
と、そこで、遠くからこっそり見ていた祐樹の友達たちが、
「羨ましい!俺もあんな風になりたい!」
と大きな声で言ったのである。もちろん二人には聞こえたが、
「愛してる」
と、実花はまるで、祐樹の友達たちをもっと羨ましがらせるように笑顔で言った。
彼女の瞳はいつもと変わりなく、美しく輝いていた。
「今日は泣いてないな」
と心の中で思った祐樹は、思わず鼻で笑ってしまった。
「ちょっとー、何笑ってるの!」
おもしろげに彼女は言う。
「いや、別に~」
二人は先ほど以上の笑顔で笑い合う。
そしてその日もいつの間にか夕方を過ぎ、夜になっていた。
腕時計を見てみると、七時を過ぎていた。
二人はまたまた、時間を気にせず、今度は草の上に寝転がって夜空を見上げた。その時の距離は近い。
「私、あなたのことがほんとに好きなんだね。」
「うん、まぁ。」
「まぁ、じゃないでしょ!」
彼女はおもしろげに祐樹のほうに頭を傾けて言った。
「急に抱きついたりしてごめんね。」
「いや、大丈夫だよ。全然。むしろ、実花が抱きついてきたら、かわいくてしょうがないもん。」
「わっ!祐樹に可愛いって言われたの初めて!」
「そこかよ!」
「あはははははは!」
祐樹の突っ込みに彼女は夜空に向けて爆笑する。
「ありがとね。」
実花は静かに言った。
そしてそろそろ目を合わせたいと思った祐樹は、実花の目を横から見る。おっと、さっきの輝いた瞳となんか違う。
「あれ、やっぱり泣いている!」
と、確信した祐樹は、
「また泣いてるの?」
と、聞いた。
やっぱり泣いてた。
そしてやっぱり、祐樹に抱きついてきた。今回の姿勢は上からだったので、いつも以上にドキドキした。
なんか、こういうの理想的だなと思った祐樹は実花をもっと力強く抱きしめた。
そうしてその夜も、美しい夜空と共に終わったのであった。
君が僕にくれた命 @kento100
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