君が僕にくれた命
@kento100
第1話 君の瞳に惹かれて
有川祐樹。高校二年生の元気な子である。普段は友達と映画に遊びに行ったり、なるべく暇がないように過ごしている、ごく普通の子である。
しかし、祐樹は、友達や親、先生には全く言ったことのない悩みを抱えている。
その悩みとは、学校の下校中に毎日のように不良が絡んできて、川の深いところまで行って息苦しくなるまで顔を汚い水につかされたり、下半身を足で思い切り蹴られたりして苦しい思いをしているということである。
ただ、家に帰った時は、そんなことはなかったかのように元気な笑顔で
「ただいま~」
と言うのである。
そのいじめのことをいつ、誰に言おうかと悩んでいるのである。祐樹は今まで、どんなに苦しいことがあっても一人で我慢してきた。だから今でも、友達や親、先生に言えないのである。
学校でいつも明るく友達と接し合っているが、心の中は不良たちのことでいっぱいなのである。
放課後、周りからはただぼーっとしているようにしか見えないが、祐樹は、いじめてくる不良たちと向き合うのに心を清めているのである。
と、そんな時、ある日、同じクラスメイトの実花が、
「ちょっと、有川、なんでそんなに暗い顔してんの?」
と心配そうに話しかけてきてくれた。しかし祐樹は、
「いや、なんでもないよ。ただぼーっとしてただけ。ぼーっとしてしまうのが癖でね。」
実花は心配そうにじっと祐樹の目を見つめている。
「一緒に帰ろう!いつも一人だから、私も。」
「う、うん。いいよ。」
祐樹自身はいきなりすぎてびっくりしていた。
そして帰りは実花と帰ることになった。
実花は明るく、話が面白いので、その話に自然とはまってしまう。
そして祐樹は実花とずいぶん仲良くなり、別に付き合ってもいないのに一緒に映画を見に行くほどの仲になった。
祐樹は不良たちのことより実花のことを優先して考えるようになった。祐樹は異性を好きになったことがない。だから、目があったり、一緒に帰っているときのドキドキというものが全く分からなかった。
一緒に帰っている間は不良たちに絡まれていじめられることはなかった。安心していた。
ある日突然、実花は、
「あのね、ちょっと悩みがあってね。」
悩みを相談されたことのない祐樹は悩みを解決することができるのかどうか心配で仕方がなかった。
それと、どんなに苦しいことがあっても一人で我慢してきて、悩みを相談したことがないから悩みを相談できている実花を見ると、
「いいなー、悩みが相談できて。」
という気持ちが心の奥底にあったのである。
しょうがなく悩みを受け取ることにした。しかし、その悩みとは、祐樹だけが聞いて共感できる内容だった。しばらく間を開け、実花はゆっくりと口を開いた。
「実はね、私、いじめられてて。」
まさか、と思い、
「それで?」
と続きを聞いた。
「下校中に、毎日のように不良がいて。そこで、顔に落書きされたりしていて。」
すると祐樹の口はだれかに操られているかのように、自然と開いた。
「ん?何か言いたいことがあるの?」
言う気はなかったが、
「あ、俺も同じだよ。まさか同じこと体験してたなんて。」
「え?今、何て言った?まさか有川もいじめれてるの?」
なぜ言ってしまったのだろうか。祐樹はひどく後悔する。まぁ、しょうがないか、と話を続ける。
「うん」
「そっか。」
実花は安心した顔で目を見つめてる。互いに笑い合う。
実花は手を取り、握った。その瞬間、今までにないドキドキを感じたのである。
「これが、好き...か。」
あっ、口に出してしまった。
「え?」
実花が顔を真っ赤にしていた。しかし、笑っていた。
「私も、す..き。」
よく恋愛交じりのドラマをみている祐樹の頭の中には、
「付き合う」
という言葉が浮かんできた。よくお互いが好きだとわかった時に
「付き合ってください」
と、言うやつである。
祐樹は実花に質問した。話の流れを気にせず。
「あのさ、お互いが好きだとわかった時に付き合ってくださいって言うシーンがよくドラマとかであるじゃん。そもそも、付き合うって、どういう意味?」
と聞くと、
「それって、いまから私たちがやるべきことだよ?だって、お互いが好きって、今、わかったじゃん。」
それを言われた途端、今、「付き合ってください」と言うべきなのか、それともまた今度に回すのか、迷った。しかし、祐樹は今度に回すということができない人間なので、今言うことにした。
「付き合ってください」
言った瞬間、なぜかすっきりした。実花は迷うことなく、
「よろしくね、祐樹!」
と今までになかった最高の美しい笑顔で目を大きく見開いて目を見つめてきた。
さらに、実花は、力強く抱きついてきた。祐樹は優しく抱き返した。彼女の瞳をよく見てみると、もちろん美しく輝いていたが、その輝きがいつもと違っていたのである。
なんと、泣いていたのである。
「ゆ~き~」
しばらくすると泣き止み、美しく輝いた涙の瞳で笑い、今までよりもっと近距離で目を見つめてきた。
そのうえ、見つめ合っている時間が長い。
祐樹は、そこで、気持ちを伝えるということはなんて気持ちの良いものなんだと実感した。実花にはものすごく感謝した。いつの間にか夜の7時になっていた。そして、時間を気にすることなくその帰り道で共に夜空を見上げていた。夜空もきれいだったが、それよりもっと、夜空を見上げている彼女の瞳のほうがきれいで、美しかった。
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