トウカ 《いちじく》


今日の私は夜の街へと繰り出す。

仕方のないこと。そう割り切って4年が過ぎた。夜になると後は昼の明るさを失い、仰々しい光に包まれる。慣れてしまえばこの光も悪くないと思ってしまう。汚染されたものだと自分でも思う。


「あ。あれトウカじゃない?なにあのドレス」

「なんか夜の仕事何やってるらしいよ」

「あいつんとこ昔から金ねぇもんな」


ーーキャハハハ…



よく私の後ろや右から聞こえる声。

私はそうやって生きるしかないと言うのに。どうやったってあなたたちとは相容れないことを知っているのに。そんなこと、ずっと、ちょっと前から知ってる。悔しいくらいに。


私の家は言われた通り貧しい。今親もなく、ぐうたらな兄を養わなければならない。

彼を育てるのでさえも妹の役割なのだから。



そういえば、この間私の理解者が1人死んだ。葬式に出たけど彼がこの世からいなくなったと言う実感は遺体を見ても湧かなかった。

でもなんだか。この世に私がいる存在意義が分からなくなった。あの日から、確実に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハルユキナツハル nun @song203

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ