ハルユキナツハル
nun
ハル 《ものさし》
どうしてなんだろう。どうしてこんなに上手くいかないのだろう。別に人より劣っているわけではない。むしろある程度のことは人より出来る。
だからと言って優越感や自信は全くない。ただ、なんというか、喪失感にも似た何かがずっと胸の中はびこっているような、そんな気持ちが止まらないのだ。
俺は1990年4月9日に生まれた。平成28年現在26歳いわゆるフリーターである。
大学はいいとこ出た。卒論も良い評価だった。顔もそんなに悪くないし、さっきも言ったけどある程度の事は人よりできる。
だからそう、あまり困らない。だから、つまらない。
就職をしたいところがなかったから延期。今は職探し。食うのに困らなければそれでいいと思っている。ー…そんな人間。
よく言われることがある。「うらやましい」と。何が?俺の何を、どこを見てそんなことを言うのだろうか。おだてられたってうれしくはない。褒められたからってそいつと仲良くなるわけでもない。一応お礼は言っとくけど。こう考えてみると俺は結構ひねくれてるんだなとつくづく思う。
これまでの人生山も谷もなかったわけではない。多くはないが一つ一つがでかかった。中2の時に窓ガラス突き破って2階から落ちて大怪我して怒られた。ちなみに全治2ヶ月。
ただこれはマシな方。高一の時には校庭の網みたいなやつに引っかかって全校生徒の前でこけた。もしかしたらこれもまだマシかもしれない。最後。
22の時親友が死んだ。連絡によると自殺だったらしい。しかし数日後病死だったと言う連絡も回って来た。何故そこがあやふやなのか不思議でたまらなかった。ちょうど桜が散った頃だった。親友が死んで少し桜が怖くなった。よく言われている、桜の下には死体が埋まっているってやつ。なんか桜に見られている気がして、怖かった。
そういえばこの間中学の頃仲良かった奴らと集まった時に親友の話になった。どういうやつだったとか、親友の好きな人についてだとか。…どうして死んだのか、とか。
******
親友はいいやつだった。いつも笑ってて、人に媚びることをしなくて、冷静に人として好きだった。めんどくさい女子に絡まれても相手が傷つかないように言葉を選んでいたし、ピアノとか絵とかめっちゃ上手かったのに謙虚だった。俺にはないものをあいつはたくさん持っていた。かっこいいやつだった。
確かに体はよかったけど死ぬような病気ではなかったはずだ。じゃあ、自殺するタイプか?と聞かれでは少し迷うがどちらかと言えばしない方だったと思う。思い切りは良い方だったしひょんなところで強いやつだったから。葬式の時に誰もあえて気づかないふりをしていたが、警察が数人いたのだ。あの後グループチャットが荒れた。「なんで警察」「一般人の葬式なのに?」「なんで?」「何かあったんじゃない?」そして誰かが言った一言で会話が止まった。
《自殺でも病気でもなくて殺されたんじゃ…》
手が震えた。息も苦しくなった。確信も証拠も何もないけど、そうだ。と親友に言われている気がした。
そうだ、ここから始まったのだ。この、どうしようもなく気持ちがすっきりしない日々が。
親友の真実を知りたいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます