『サカサカ』

虚無

第1話

『サカサカ』

 田舎に帰省していた時の事です。深夜にタバコが切れてしまったので、ヘビースモーカーの私は少し遠いが、コンビニに行くことにした。稲作を行なっている実家から、コンビに行くには薄暗い田んぼの付近を通らないといけない、しかも雨もかなり降っている。私は、薄暗い田んぼの付近をぬかるみをさけながら傘をさし歩いていると、後ろから『サカサカサカ…サカサカサカ』とまるでレインコートが擦れるような音と『バシャッ!バシャバシャバシャ』と勢いよく水溜まりを蹴りながら何かが近づいてきた。私は恐る恐る振り向くと、何のことはなく、透明のレインコートを着た、髪の長い女性が急いで走って来るのが見えた。おおかた私と同じコンビニに行くのに、暗い道を駆け抜けようとしているのだなと思ったが、女がちかづくにつれ【違和感】を覚えた…

『そういえばあの女の足、やけに細くて短く無いか?』違和感の正体にに気づいた頃に、女は私の真後ろでピタッと歩みを止め、『ネエ、ミテ、ヒトニミエル…ツナゲタノ……ツナゲタノ…ミテ、ミテ、ミテ、ミテ、ミテ』と壊れたテープレコーダーのように私の耳元で繰り返した…

 私は恐ろしくなり、全速力で逃げ出したが、後ろに女はピッタリとついてサカサカサカ音を立てて走ってくるその間ずっと『ミテ、ミテ、ミテ、ミテ…』と連呼しながら…私はぬかるみにハマり、転倒しその女の姿を正面から見て驚愕した。女は足の位置に手が付いており、手の位置には足が、そして顔かと思った部分は後頭部…私は思わずこう叫んだ『お…お前全部逆さまじゃねーかよ!バ、化け物!』すると女の首は180度回転し私を見つめたかとおもうと、自分の頭を両腕の位置にある足で挟み、引きちぎり、足の位置にある手の間にグリグリとねじ込んで、逆立ちした状態で、こう行った『ヒトニ…ミエル…ミテミテミテ…』私は、ヤケクソになり『雨の日に逆立ちして、ちぎった首ねじ込む化け物が人に見えるわけ無いだろう!』と言うと、女は足を地につけて、四つん這いの姿勢になり『モウ…イイ……オマエのカラダをヨコセッ!』と野太い声で叫ぶと、四つん這いのまま、また追いかけてきた、私はまた全速力で走り逃げると、女は首の位置を変えたせいか、ぬかるみで転倒し田んぼに転落した、その隙に実家に逃げ帰った……翌日祖母にその話しをすると、ただ一言だけ『今日はお彼岸のいりだからね…』と呟き、顔色が真っ青になり、その事については一切語ろうとはしなかった…

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『サカサカ』 虚無 @Chin25454

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