小説リレー企画「魔王が体育館に現れた 第6話」
馬田ふらい
第6話 突入時衝撃に備えよ
過去話
1話目(ハイロックさん)
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2話目(亀麦茶さん)
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3話目(山吹さん)
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4話目(ぎんぴかさん)
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5話目(人間の触覚さん)
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(第6話は、第4話の続きにあたります)
逃げ惑う生徒をかいくぐり、おれたち7人はなんとか体育館に到着した。閉ざされた扉の奥から魔王の咆哮と瘴気に満ちた風が漏れ出ている。
「いきなりボス戦かよ……燃えるじゃねえか体脂肪!シュッ、シュシュ」
フックこと福田JABはシャドウで身体を温めている。ちなみに風を切るSEは彼の口から発せられたものだ。
「確かに、扉の奥からはただならぬオーラを感じますな。これは少し用心した方がいいと思いますぞ」
左手で無精髭を弄りながら薩摩・
「そういえば、教師陣はどこ?普通は先生が率先して魔王討伐に乗り出すんじゃないの?」
確かにそうだ。おれたちは精鋭といえども生徒に過ぎない。ここは戦闘経験豊富な教師陣がまず生徒の盾になるべきなのだ。
そうでなくとも避難指示くらい出すはずなのだ。
「言われてみればそうだね、マノマノちゃん♡」
うなづく只野君。
いや、すっとぼけんなよ只野、お前が発端だったろう。あとお前はマノマノ呼びするな。ちゃん付けするな。語尾に♡を付けるな。
ユダ・コキュートスと山田ジャンヌの二人も、この不気味な雰囲気に震え上がったりはしていない。みんな、大丈夫そうだ。
おれは扉の奥にいる魔王のことを考えながら、すうっと息を吸った。
「それじゃあ」
「それでは参るぞ、諸君。私ジャンヌについて来たまえ!」
「「オオー!」」
山田ジャンヌがおれに割り込んで先陣を切り、みなが続いた。
「ちょっ、まっ、オイ!」
かくして、リーダーで勇者のおれがまた、みんなの後を追う運びとなった。
一足遅れて体育館に飛び込んだのは、あるいは幸運だったかもしれない。
おれが突入した瞬間、おれの真横を高速で何かが吹き飛んでいき、それは壁に激突した。
「まさか、フック!?」
「よう、相棒……。すまねぇ、アイスキャンデーよろしくナメてかかってたぜ」
「どうした。何があった」
「むしろおれが聞きてえぐらいだ……。魔王って、あんな馬鹿でかい野郎なのかよ」
そう言われ、おれは前方を見た。
そこにいたのは、6mある天井に頭の先が付きそうな、巨大なミノタウルスだった。その足元には残りの5人が必死に戦っているが、与えたダメージは微々たるものである。基本攻撃は棍棒の振り下ろしで、咆哮をした後は高エネルギー波を纏ったなぎ払いをする。パーティでも重力級のフックが飛ばされたのはこの攻撃だろう。
どうも作戦なしでは厳しそうな相手だ。
フックを優しく壁にもたらさせているとき、おれは魔王の口の周りに光が集まるのを見た。おそらく只野の言っていたレーザーの準備動作だろう。
「みんな、作戦を立てる!一度撤退だ!」
おれは声を張り上げたが、5人には届かない。光はさらに強まっていく。
「撤退だ、みんな!」
さらに大声で叫んだ。しかしその声も魔王の咆哮に掻き消されてしまう。おれは地団駄を踏んだ。動悸がする。汗が吹き出る。みんなは気がつかない。フックはぐったりしている。一人、焦る。
おれは再度声を振り絞った。
「撤退、撤退ーーーー!!!!」
しかし、時すでに遅し。前線の彼らが振り向いたころ、すでに魔王の口から全てを焼き払うレーザー光線が放たれていた。
瞬間、視界が白い光に呑まれ、世界に亀裂が走り、体育館は唸りを上げた。
ガラガラガラガラガラガラ!!!!
う、うーん……。生きてる?
いや、生きてる!
おれは腕に乗ったコンクリート片を押しのけて体を持ち上げた。幸いおれに怪我はない。
さっきの破壊光線で体育館の天井が崩れ落ち、青空が顔を見せる。見渡せば、瓦礫が散乱している。
みんなは?この瓦礫の下か!
すぐ後ろでカラカラと物音がした。
「フックか。大丈夫か!」
「ああ、壁際にいたおかげで大事には至ってねえよ」
「動けるか?」
「なんとかな」
「よし。……みんなを救いにいくぞ」
おれは低い声で言った。
魔王は相変わらず好き勝手に暴れている。潰される前に助けに行かなければならない。
おれたち2人が前進する途中で薩摩と山田はむくりと起き上がった。
「2人とも無事か?」
とおれは尋ねた。
「我々はなんとか大丈夫ですよ。いやはや、恐ろしい攻撃でしたなあ」
薩摩は割と余裕だな。
「うむう、残りは村人くん、魔女、ユダ、そして私の愛馬ナリアンヌだな」
山田は落ち着いた調子で話すが、足先は落ち着いていなかった。
どうやら、一番消耗が少ないのはおれらしかった。ならば。
「よし、わかった。おれが囮になるから、その隙に瓦礫の下から今の3人+馬を引っ張りだしてくれ」
「「了解!」」
フック、薩摩、山田の3人はそれぞれ救出活動に向かった。
おれは魔王の前に出る。近くで見ると、その迫力に尻込みしそうになるが、なんとか両足で踏ん張る。
「さあ、来い!」
呼びかけに応じてその両眼がギロリと回り、おれを捉えた。
おれはその時、魔王の顔が保健体育の
とても、嫌な予感がした。
小説リレー企画「魔王が体育館に現れた 第6話」 馬田ふらい @marghery
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