第13話 思い

「は、花宮?どうした?大丈夫か?」と俺は声をかけた。




「う、うん、ごめん、大丈夫」そう言って袖で涙をぬぐった。




「何かあったのか?」




「いや、もう。この部活、解散するのかと思ったから。その、二人とも仲直りしたみたいだから、嬉しくて、安心して、つい涙が出た」と涙を流しながら言った。その涙は夕焼けの光に当たって、とても綺麗で輝いて見えた。それは、琥御山も思ったことかもしれない。




「ごめんな、花宮。一番迷惑かけてたのは、花宮だもんな。ごめん」と頭を下げて謝った。




 花宮は、何か言いたいことがあったのだろう、ただそれも我慢して、何も言わずに、触れずに、俺たちに気を遣っていたのだろう。




「いや、私は全然大丈夫。気にしないで」と言って微笑んだ。




ただその微笑みには、どこか悲しげな雰囲気があった。




「うん、ありがとな」と言って、いつも座る席に、座った




俺は、これでよかったと思う。間違ってなどいない。琥御山と仲直りをし、この部活の解散を回避した。これは夏彦も望んでいたことだ。ただ、まだ問題は残っている。それは全校のみんなだ。夏彦に言えば、クラスは何とかなるだろうが、ほかのクラスや、学年はどうにもならないだろう。そう思って、俺は琥御山に聞いてみた。




「あのさ、俺今回の件で一気に嫌われたんだ。これは全校に広まってるかもしれないんだけど、それどうにかしてくれない?」




「あぁ、あれか、私も大丈夫?とか喧嘩したの?とかいろいろ聞かれたなぁ、まぁ、みんなに私からいろいろと言っておく」




「ありがと、助かる。なんか、その言い方だと、なぜかみんな知ってたみたいな感じするけど、お前が広めたんじゃなかったの?」とごく普通で当たり前なことを聞いた。




「え?何言ってんの?私じゃないよ。たぶん昨日来てた子が言ったんじゃない?廊下にいたし」




「あ、あの依頼者か、あいつだれなんだ?何年生だ?」




「同じなはずだよ。あの人、体育委員長だしなぁ、だから来たんだと思うよ」




「そうか、一緒か」




「花宮は、あの人と知り合い?なんか知ってた感じしたけど」




「いや、知らない人、わからない」と下を向いたまま、顔をこちらに見せずに言った。




何か言いたくなさそうな感じがしたので、それからは花宮には、そのことについて触れなかった。




結局、今日は誰も来なかったので、帰ろうとしたが、俺は気になったことがあったから、それを聞くことにした。




「あのさ、この部って、コミュ障改善の部活なのに、俺たち今のところ依頼しか受けてないんだが。俺たちでコミュ障を改善しないの?」




「いや、話しかけられないよ、私コミュ障だし」と琥御山が言った。




「私も、コミュ障だから」と花宮も言った。




「いや、俺もだけどさ、それじゃ、改善の余地がない。何かしないと。やっぱり話しかけるべきだ。一日一個は課題としてみんなででもいい、何かやろう」と言った。




「う、うん、わかった」と琥御山は納得した。




花宮の方を見ると、コクリとうなずいていた。




「うん、それならいいんだ」そう言って教室を出た。






今日も花宮と一緒に帰った。


すると、帰り際花宮が




「今から、駅に行かない?」と急に聞いてきた。




「あ、あぁいいよ。なにすんの?」と聞いた。




「う、うーん、ちょっとプレゼントを買おうかなと思ってて」となぜか恥ずかしそうに言った。




「プレゼントか、なるほど、でも俺なんかがいてもいいのか?」と聞いた。事実俺なんかがいても、何の参考にもならない。




「うん、いていいの」




「そうか、よかったぁ、で誰に買うつもりなんだ?」




「琥、琥、琥御山さん」と恥ずかしそうに言い、目的地まで行こうとしたとき、ばったりと夏彦たちのグループに遭遇してしまった。そこには、花宮のことが好きな内田もいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぼっちだがリア充だから俺の人生は間違っていない @unomiya_aruto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ