第12話 優しさ

 次の日、教室に入ると、みんなが、こちらを見ていた。周りで、ひそひそ話す人、俺に指を指すものもいる。すぐに察しは、ついた。昨日の、部活での出来事だろう。




その日の放課後、夏彦が話しかけてきた。




「悠希、君は昨日琥御山さんと、喧嘩でもしたのか?」




「喧嘩?喧嘩なんか、友達とするもんだろ?だから、俺はしたことないよ」




「じゃあ、言い合いか?」




「うん、まぁそんな感じだな」




「じゃあ、言い合いになって、泣かせたと?」




「結論的には、泣かせたけど、まさか、泣くとは思わないからなぁ」




「まぁ、なんにせよ、君が泣かせたんだから、謝っとけよ、あと女子たちが怒ってるから、気をつけとけ」




「は?俺が謝るの?女子ってめんどくせーな、何も知らないくせに怒るなんて訳わかんねぇな」




「謝らなかったら、ずっとこんな感じで、気まずくて、部活にも出られないぞ。俺も友達がこんな目にあったら、怒るぞ」




「部活出られなかったら、お前の依頼は破棄になるか、琥御山一人でやることになるなぁ。それって、友達の時だろ、全員が琥御山のことを友達と思ってるようには見えないんだが」




「まぁ、ノリの奴らとかもそりゃ、いるだろうけど、琥御山は人望もいいしな、そりゃ、こうなるよ」




「そうか、たとえ、あいつが悪くても、こうなるんだな」




「なんにがあったんだ?」




「は?お前なにも知らないのに、あんなこと言ってたのか」




「うん、何も知らない」




知らないということは、琥御山は夏彦には何も言ってないのだろう。俺はそう確信した。




「体育祭の実行委員の奴らが、コミュ部に来たんだよ。依頼は、実行委員長になること、琥御山は、オッケーをした。俺と花宮は、それに反対した。理由はお前の依頼がまだ終わってないからな。その時に、俺が強く言い過ぎたんだと思うけど」




「すまなかった」




「は?お前が謝る必要はないだろ、あいつが悪いんだから」




「依頼をしてなければ、それと何も知らなくて、すまなかった。コミュ部解散だけはならないようにしてくれ」」




「謝んなよ。解散はあいつ次第だから、何とも言えない。今から部活に行く、だからその時に話す」




「何もなければいいんだけどな、君は優しいから、ほんとにすごいよ。今日もずっと黙っていたもんな」




「いや、優しさとかじゃない、ただ話したくないだけだ、だから何も言わなかった。いや、言えなかった、逃げてたんだよ俺は、お前らから、みんなから逃げたんだ」




「逃げか、そうか、まぁ君が思うならそれでもいいよ。ただ俺は君が優しいと思うよ。じゃあ、俺は部活あるから」そう言って夏彦は手を振って、走ってどこかへ行ってしまった。多分部活に行くのだろう。




俺はひとりで、部室に行った。花宮はもう先に行ってるからだ。


部室の扉の前に着くと、琥御山の声が聞こえた。




「花宮さん、あんたは、悠希のことどう思ってんの?」




「どうって、優しい人だなって」と花宮は言った。




「本当にそれだけ?」




「うん、それだけ」




「悠希はあんたのことが好きなの、私は悠希のことが好きなの、どうすればいいの?」




「そんなこと言われても、困るよ」




「あんたなんかいなければよかったのに」




俺はその言葉を聞き、すぐに扉を開けた、そして




「それは言いすぎだろ」と言うと、琥御山と花宮はびっくりした顔でこちらを見る。




「え?いつから?」




「いなければよかったから」そう、嘘をついた。




「俺は、花宮がいてすごい助かってるし、優しいし、頭もいい。いてくれて本当に良かったと思う。ありがとな。琥御山のことなんか気にすんな」




「ありがとう」




「それと、琥御山、昨日はごめんな、俺も言い過ぎた」と勝手に口から出た。その言葉に驚いたのか、琥御山は




「え?いや、大丈夫だから、気にしなくていい。私が勝手に受けてしまったから、ああなっただけ、本当にすいませんでした」というと花宮が、涙を流していた。俺にはよくわからず、琥御山と目を合わせた後、俺たち、二人は首をかしげてしまった。

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