第11話 口論
部室に着き、扉を開ける前に大きく深呼吸をして教室に入った。
「よー、遅くなってわりーな」と悠希は謝った。
「大丈夫、花宮さんに、事情は聞いてたから」と琥御山が言った。
「そうか。花宮、ありがとな」と恥ずかしそうに言った。
「いや、うん、いいよ」と花宮は恥ずかしそうに言った。
「うん、でもまぁ、ほんとにありがと、うん」そう言っていつも座る席に座った。
この沈黙は、いつものことだ、そして琥御山がスマホをいじり、花宮が本を読む、もしくは宿題をする。この光景はいつもと変わらない。ただ、変わったことがあるのは、琥御山と花宮の席の距離が二席分縮まった。これは、仲が深まったということかもしれない。お俺がいないところで何かしら話しているのだろう。
「ほんとに、人来ないなぁ」と眠そうに言った。
「そうだね、まぁいつものことだし、仕方ない」と琥御山が言った後、教室の扉が「コンコン」となった。
その音が聞こえた琥御山は、すぐに
「はい、どーぞ」と言った。
「失礼します」と言い教室に入ってきた。
教室に入ってきたのは、髪の毛は青でショート、身長は、女子の方では高い方だった。可愛いと言うより、男っぽい、嫌、男顔で運動系女子だった。
「どこか適当、座って」と琥御山が言った。そう言われ、女の人は、琥御山の近くに座った。
「要件は?」
「体育祭実行委員長が決まらないんです。そのやってくれないかなって思いまして」
「体育祭の実行委員長は、確か生徒会役委員はだめだったはずじゃ?」
「ちゃんと、先生に許可もらいましたが、生徒会長には頼まないように、と言われたので、副会長の琥御山さんに」
「そう、まぁ断る理由もないし、引き受けます」と言った。俺と花宮は、驚いた顔をした。
断る理由は、ある。引き受ければ、この部は一旦休止になるだろう。そうなれば、夏彦の依頼を引き受けた俺たちはどうすればいいのか。創部者であり、部長でもある琥御山が不在となればどうすることもできない。要するに、休部というのは必至だ。そう思った、俺は琥御山に言おうとしたが、花宮が先に発言した。
「ちょっと待って、その依頼は引き受けることは、できない」
「え?なんで?」と首をかしげていった。
「この部は、部長であり、創部者である琥御山さんがいなければ、休部は免れない。つまり、今、引き受けてる夏彦君の依頼は、一旦保留になる。でも、体育祭の実行委員長をするなら、保留じゃだめ。つまり、実質破棄ということになる。だから、琥御山さんが実行委員長をしてはいけないということだよ。なので、その依頼を引き受けることはできない」と言った。
その必死さに皆が、花宮の方を向いたまま、固まっていた。もちろん俺もだ。
俺は、突然のこと過ぎて、俺頭の中で整理ができていなかった。何か言おうと思ったとき、誰かが口を開いた。
「でも困ってるし、それに私がいなくても、この部活は続ければいい。夏彦のことは、二人に任せる。この部は、私だけのもじゃない。時間が空いたら、ここに来ることはできる」と、そう発言したのは、琥御山だった。
「何言ってんだ?三人で受けた依頼だろ、お前もちゃんと考えるって言ったし、案を出すとも言った。俺と花宮二人じゃないだろ。だから、俺たち三人で解決するべきだろ、よく考えろよ。それに空いた時間に来るなんてできるのか?無理だろ、生徒会長より忙しくなるんだぞ。お前のそのわがままで、何人に迷惑がかかると思ってるんだ。ちゃんと現実を見ろよ」とつい、きつく言ってしまった。
「でも、これを引き受けないと、みんなに迷惑が掛かる」
「何言ってんだ、そんなの、体育祭の実行委員がわるいんだろ。自業自得だろ。てことで、依頼は、無かったことに」そう言って無理やり追い返した。この依頼の申し出自体を強制終了させた。
「お前、どっちが大事かよく考えろよ、もっと落ち着けよ」と説得させるために言った。
「ご、ごめん。冷静じゃなかった、ちゃんと考えてなかった、ごめん」と泣きそうになりながら言い、鞄を持って部室を飛び出した。
その時の扉の閉め方が、とても強かった。もしかしたら、怒ってるのかもしれない。
「花宮、帰りますか?」そう問うと
「うん、帰ろう」と言った。
ただ、花宮の顔はどこか悲しそうな顔をして遠くを見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます