第21話☆準備

現在クラクフ領では犯罪者の種類により裁判にかけられる犯罪者とかけられない犯罪者の2つが有った。


正式な領地の統治者である クラクフ伯爵不在の今、伯爵代理の権限で判決にかけられる者とかけられぬ者に分かれるという事もあるには有るが。


領内で他貴族が犯罪を犯した場合 貴族間での問題解決の方法としてロベリア王国法では『王国裁判』が施行される 貴族間の軍事的衝突などに発展しないようにする処置ではある。


他貴族の領地内で『犯罪行為』を行った『貴族』は王国法では『王国預り』となる。


『その配下の者』でも『相手貴族』の申し立ていかんで『王国裁判』にかけることができるのである。


被害者側の貴族は問題の者を王都に速やかに『護送』せねばならない。


しかし上位貴族が下位貴族より有利な『王国裁判』は不平等として最近ではあまり行われてはいない。

犯行が行われた時点で判決を下す(殺す)のが一般的な対処法であった。


犯行に対処した結果 『相手の身分』を知らずに処罰した事にするのが普通であり面倒がないのだ。


「生き残った者達は 王都へ護送で宜しいのですね?」


将軍は領主代行に幾度目かの確認を取った。


今回の件 『余にも非道』ここまで排除派が『事をおこす』とは考えもしていなかった。


これは もう 油断としか言えない、あの『姫』には感謝しかない…今回の一件は全て彼女のお蔭でまるく納まりそうだ。


今回の事件の黒幕 排除派の貴族の手の者を捕まえた『姫』は報酬として『館の襲撃者』の身柄を要求して来た。


こちらは非道な手段を使った排除派の者達を堂々と『王国裁判』にかける事が出来る、それで今後はクラクフ領への干渉は減るはずである。


「ああそうだった… 護送する者達『だけに』に 食べさせる様にと伊織殿から預かっている物が有る」


「? あの犯罪者共にですか?」


「彼女は 『やりすぎた これで栄養を付けて 養生する様に」と 言っていたわ… 器の大きい人よね… 負けるわ…」


そう言って『滋養』の有りそうな『食料』を護送の護衛で街を離れる将軍に託したのであった。


「犯罪者だけに?に食べさせろ?」


ふむ?犯罪者用の『食事?』あの『姫』の事だ…何かあるのかも知れぬな…毒の類?か…


将軍は王都に旅立った…自分の護送していく者が王都で『無罪』になるのは『確定』している事である。


あの『姫』がソレを良しとした『理由』は不明だが、自分の仕事を確りとこなす事を優先する。


『あの姫』がこのクラクフ領に暫く滞在すると聞いた時の安心感…今ならこのクラクフ領を任せられる。


「お願いしますぞ! 伊織姫 カネサダ殿」


しかし…あの凄腕剣士が お嬢様の婚約者に成るとは…『想定外』であった。


嬉しくも 寂しい? そのビッグニュースを親友の現クラクフ伯爵に伝えられるのが今回の一番の喜びで有ろう。


卑怯な犯罪者の事はもはやどうでも良くなった将軍は、『姫』の差し入れを道中確りと犯罪者に与えながら王都に急ぐのであった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「お嬢様 首尾は如何でしょうか?」


「あの将軍は真面目だから 確りと仕事をしてくれたみたい…」


遠見で見える範囲で時折覗き見た護送団はしっかりと『仕込み』が完了して、王都に送り込まれたようだ。


俺の前には移民都市から呼寄せた『援軍』 天狗メイド紗那が居る。


彼女に 色々と持って来てもらった。


名前 天狗  紗那(男娘)

年齢 830

レベル 38

体力 8900 

妖力 3400 (+300)

力 420 

技 750

術 460  (+250)

魅 520 (+300)


スキル 冥土  薄墨

装備  和洋折衷冥途着物 「薄墨」銘の龍笛。


スキルの 冥土 冥土に逝ける程の冥土技

     薄墨 龍笛を吹いている間誰も攻撃してこなくなる。



「・・・・・・・・・・シャナの入れてくれるお茶って 美味しいよね」


思わず 逝きそう…


「ありがとう御座います お嬢様」


「ワタシの茶菓子も食べて~お嬢サマ~♪」


このメイド…2人ともパない… 突っ込むよりツッコまれそう…コワイヨー!まともな妖怪居ないのか!?


まあ なにはともあれ 『発芽』 が楽しみである。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・」


「殿下? 殿下!駄目だ…壊れた…」


「告白したら 回し蹴りで撃沈 私なら…100回死にます」


グサ…


若き天才商人トライヒ・カラグナが真っ青な顔で言う


「ここぞの タイミングが 分からない男は ああなりますわね…」


グサグサ…


ミランダ・テルル 王都商業ギルド副マスター 出来る女で合理的な女は更に切り付ける。


「女性経験の無い男の告白って…独りよがりで押しつけがましいから 自分の地位をこれ見よがしに言う時点で減点100よね」


グサグサグサ…


「では どうしろと言うのだ? 交渉権は全て クラクフ伯に持っていかれたのだぞ? これでは何処にも取りつく島が無いではないか?」


悲壮感を漂よわせ 投げやりなた王子 そんな彼を見たのは初めてであり バルム侯爵派の面々は危機感を覚えるのと共に王子の人間的変化にも期待していた。


優秀だが、どこか機械的な人間味の薄い王子の変化に…


「クラクフ伯 では無く マリア・デ・クラクフにですわね ココは大きいですわ! それと家臣を マリア嬢の婚約者にすげたのも重要事項!これで クファクフは安泰ですわね…」


腕を組んで 唸りを上げる 彼女には 『固有スキル』 看破と言うスキルが有る。


大まかに言えばウソを見破るスキル 言葉を聴く事が出来れば発動できるため非常に便利で有り 商人としては無敵と言っても良い相性のいいスキルだ。


バルム侯爵派で発言を重要視されるのも本質を見抜く持ち前の直感とこのスキルが有る為でも有った。


「彼女の言葉は?」


縮こまっていく王子


「嘘一つ無く…いつも 真っ直ぐですわね」


「私が差別主義者?」


部屋の隅で更に 縮む…


「人外排斥の事でしょう…アマテラス共和国は 獣人が普通に居るのかもしれませんね。」


「もしかして?彼女も獣人か?」


「聞いてみては?」


「・・・・・・・・・・恐い」


王子の耳元で囁く…


「差別主義者」


ミランダに弄られる王子を横目に見ながら 他の面々は真面目に会議を始める。


「まず マリア嬢に 同室での協議を持ち掛けて見ては」


トライヒ・カラグナ カラグナ商会頭取は言う…


「主導権は マリア嬢としつつ 情報を引き出すか…」


とはドルクセン・カラグナ カラグナ商会会頭言


「ふむ 話すのか?あの姫は… 随分と知的なようで 一国の王子を足蹴にする蛮行をおこしたが?」


外交特使 子爵 ルドルフ・バン・アルツァーは言う 


「そこは 知らなかった で通すであろう? そもそも名乗っておるまい?道を歩いていたら…誘われた?でしたか…」


アルビス・ルンデ・バルム侯爵はさらに言う…


「あの時 真面目に 名乗っておけば…違う反応で有ったかも知れぬし…」


王子の縮みぐあいが益々増していく、今回の事は良い薬となったであろう、あの『姫』知っていて『蹴り飛ばした』のだろう…何とも『やり手』である…マリア嬢と言い『姫』と言い、王子をいじるミランダと言い 最近の女はどうも優秀過ぎるようだ。


「普通に交渉すればあの姫は教えてくれよう 儂がもう少し若ければ嫁にしたのだが…」


ドミテル・ガング・マイヤー 王都鍛冶ギルドマスターは既に多くの妻が居る 子は多すぎて 覚えてはいない…英雄的鍛冶師はいつもマイペースで有った。


「では 要請してみますか…」


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幻想移民 異世界百鬼夜行 みかにゃん96 @mikannneko96

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