3 夢の泡
絵画教室は小学六年生迄続けた
黙ってモチーフに向かう日
真面目なタッチを
背中越しに
見てくれた遠野先生
お話を少しして空想の絵を描く日
目を瞑ったり
思い付いたりして
花の絵を黒くしてしまったりして
それも
見つめてくれた遠野先生
楽しかった
高橋君は
地元の中学一年生になり
首を絞められて失明しかかった
私は
校内暴力のある
地元公立中へ行かない様に
私立受験を考えた
翌年
私は
第一志望の中学に合格した
美術に熱心な私立の学校だ
遠野先生は
大学院に進学していた
そして
遠野先生は
国費留学が決まったと
銀座で個展を開いた
遠野先生の世界は
ダリの如く
シュルレアリスムで
それでいて
あたたかかった
この時
言えなかった言葉があった
ありがとう
遠野先生
好きでした
好きでした
好きだから
壊れるのが嫌だから
言えなかった
でも
どうして
個展の日
俯いて何も言えなかったのだろう
もう
パリへ発ってしまった
遠野先生
ありがとう
私も
大きくなったら
パリへ行きたい
ありがとうを
伝えたくて
愛していますと
言えなかったと
これが私の
『おさな恋』
Fin
おさな恋 ~夢の泡と消えないで いすみ 静江 @uhi_cna
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