エピローグ
二週間後。
舞夜はいつも通りの時間に家を出て、学校へと向かっていた。
あの騒動の後、舞夜に負けて瀕死の状態であった夜宵を治すように凛子はマリアに頼んだ。
時間を巻き戻すよりも前の事を全て話したにも関わらず、彼女を治そうとした凛子にさすがの舞夜も反対したが、夜宵の罪は生きて償わせるべきだと返された。
それにマリアが言っていたというのだ、誰も死なせたくないということを。
今でも納得はし難いが仕方ないと舞夜は思うことにした。
黒川海莉とあの少年、如月諒花の三人も彼女の所属する異能力者研究所で身柄を拘束することとなった。
「舞夜は今日も早いね」
「佳苗ちゃんは相変わらずだね」
いつもの親友との会話を楽しむ彼女の平穏が取り戻された。
ただ、今日の放課後も佳苗と帰ることができない。校門には久々に凛子が立っていた。
「男子達の視線を集めるのも久しぶりね」
「目立たないでくださいよね」
車が颯爽と走りだす。
「まだ、私のしたことに納得がいかない?」
しばらく走った所で肘を付いて車窓を眺めている舞夜に話しかける。
「いいえ、凛子さんの考えは確かに一理ありますし、間違ってはないと思います。ただ、完全に正しいとも言えません」
「まあ、そう言うのも無理ないわね。あなたが全てを終わらせてくれたのに、私も申し訳ないとは思う。でも、あの姫島夜宵だけは私たちだけの手で終わらせてはいい問題じゃなかったの」
それ以上の会話はない。
凛子が車を止めたのは、東王市にある久世真冬の占いの館であった。
ただし、今日は閉店中である。
「舞夜が来たよー!」
入るなり、夜春がいつものテンションで舞夜に飛びつく。
マリア、恋歌、朱音、天音、心、真冬も揃っていた。
「私が一番最後だったか。夜春、ちょっと暑いよ」
舞夜の背中を押して、部屋の中央へと連れていく夜春。
皆はジュースの入った紙コップを持って準備をしていた。
マリアが舞夜にそれを渡す。
「じゃあ、皆が揃ったところで、乾杯しましょう」
凛子の乾杯の音頭に合わせて、全員がコップをかかげた。
今日は真冬の退院祝いと姫島夜宵達の事件を解決に導いた打ち上げなのだ。
主催者は凛子で、この会場を提供してくれたのは真冬である。
「いやー、やっぱり舞夜は凄い! 私はずっと信じてたよ!」
「夜春ちゃん、酔っ払ってるおじさんみたいだよ」
マリアが彼女の横で笑ってみせる。
真冬が舞夜の側に来た。
「真冬……ごめんなさい。あの時、あなたの連絡に気付けなくて」
舞夜は以前の失態を謝罪する。
「いいの。舞夜がいてくれたから、皆助かった。今日は楽しみましょう」
笑顔で言う彼女を見て、舞夜も賛同する。
「ちょっと朱音、そんなにガッツいたら喉に詰まるわよ」
「平気平気、あたしの体は頑丈だからな」
「心ちゃんのとこのケーキ本当に美味しいよね。さすが一流スイーツ店の娘!」「お、お口にあって何よりです。いつでもご馳走しますので!」
各々楽しんでいる彼女達の姿が微笑ましかった。
「舞夜、あなたに会えて良かったわ」
「そういえば、聞こうと思ってたんですけど。私、あの時よりも前に凛子さんと会ってた気がするんですけど、覚えてませんか?」
舞夜の質問に彼女は、不敵な笑みを浮かべたかと思うと、優しく舞夜を抱きしめた。近いうちに話をしようと耳元で囁く。
この一ヶ月ほどで色々なことがあった。
今まで経験したことのない出来事ばかりで、大変なこともあったが、彼女達に出会えて本当に良かったと舞夜は思う。
霊とは誰の側にでもいるもの。
気が付きさえすれば、霊はいつもそこにいる。
第一部 完
霊はいつもそこにいる 滝川零 @zeroema
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。霊はいつもそこにいるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます