太陽系を駆け巡る船と、そこに命をかけた人々

 自らデザインした宇宙船、アローラムを駆り太陽系の運び屋を営む主人公、湊。そしてもうひとりの主人公、アローラムに密航した高校生の女の子、香帆。ほほうおじさん meets JK@宇宙ですか、と思いきや、何者かの陰謀によってアローラムは大破。二人は残ったパーツを活かして航海を続けられないかと四苦八苦することに。しかし一連の出来事は、湊の類稀な船舶デザインのセンスを求めるNaRDOと、それをさせまいとする謎の勢力の争いで、香帆はNaRDOに所属する天才ソフトウェア技術者であった。二人は謎の異星船を捕獲するために力を合わせることになり……。
 人類が太陽系を自在に航海できるようになり、しかし外宇宙への進出はいまだ夢。絶妙な設定が非凡な魅力をキラキラと放っていますが、宇宙における極限状態の描写もまた良い。金星や木星の過酷な環境。そして、そこにいかにして潜航するか。船舶デザインを進めていくシーンも、リアルでありながらおっ、と思わせる発想で読者を驚かせてくれます。
 異星船は何のために人類の前に現れたのか。そして、湊と香帆の関係はどうなっていくのか。宇宙の謎に技術と度胸で挑んでいく二人の物語。SF読者のみならず、多くの人に読んでもらいたい一作でした。

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