参駅目 疑い
ー11年前の9月10日ー
まさかとは思った。まさか自分の彼女に疑いを掛けてしまうとは思ってもみなかった。この日、ユメが僕の家に遊びに来たので料理を振舞った。この頃ユメの予定がなかなか合わず、こうしてまともに会話をしたのは、久しぶりだった。食後のデザートを用意する時だった。「ちょっとトイレ借りるね。」
「うん、出てすぐ左にあるから。」
ユメが手洗いに行っている間にデザートをテーブルに並べる。みかんを乗せた杏仁豆腐だ。座って待っていると、ユメの携帯からLINEの着信が来た。何気なく覗くと、(たくや: 明後日いっしょにご飯でもいきませんか?)
名前からして明らかに男だ、最近やけに連みが悪かったり予定が合わなかったりしたのはまさかこれなのか?嫌な疑いが頭をよぎった。そうして考えあぐねている間にトイレから帰ってきたユメに問うた。「質問なんだけど、」何?っと疑問そうに首を傾ける。僕はため息を一つついてから目を合わせて告げる。
「最近、男に会った?」へ?っととぼけ顔で不思議そうにしているだけだった。
「たくやって、いったい誰なんだ?どこで知り合った?」すると驚いたと思ったらすぐさまいつも通りの表情に戻って、言った。「あなたには関係ないでしょ」
これはもう決定的な一言だった。これを聞いただけでも大方予想はついた。全てを理解した瞬間、僕は骨が抜けたかのように苦笑いを浮かべて、そのまま自宅へ戻った。それが聞けただけでも十分だ。後は彼女がした事を自白させるのみ。そう思っていたが、この時僕はとんだ勘違いをしていたのだった。
この一連の過去の出来事を窓越しで眺めていた僕にマユが突然告げてきた。
「僕が何者か、教えてあげるよ。あとあなたがどうして今ここで過去の出来事を見ているのかを」
「知ってるのか!?全部」
コクンっと頷いてから彼は話し始めた。
「今から10年前の10月20日、僕は学校から下校中によくいつも通る線路脇の道路を通って帰宅していた。この日も同じく歩いていたら、あるはずのないトンネルが踏切の10メートル離れたところにあった。いつも通って見ていた線路だからある訳がないのにその時だけ、そこにトンネルがあったんだ。
興味が湧いて線路を沿って歩いてトンネルに入ると、奥から無数の建物の光が見えたんだ。まるで都市だった、その街に入ろうとした時黒い誰かが僕を掴んで、そばにあった湖に投げ込んだんだ。気がついたらこの電車に乗ってて、出られなくなった。そしたらユメさんが声をかけてけれたんだ。」話の途中で僕が遮る「ちょ、ちょっと待って、ユメと話せたのか?と言うか、ユメもこの電車に乗ってるのか!?」すると一つ分かった事があった。マユは結局どうなったのか、何となく察しがついたが、あまりにも最悪な結果の憶測なので言わなかったが、そんな僕の表情を見てすぐにわかったらしかった。「もう気づいてると思うけど、僕はもう死んでるんだ。」突拍子もない告白に困惑する。すると隣の車両から麗奈が入って来る。相変わらずマユは見えていないようだった。3人並んで座ると、
電車が動き出し、終わることのない。記憶を辿る旅が再開する。
記憶列車 いおリンゴ @iori0318
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