電話が来た

 りりりりり

 電話が鳴った。蔵に向かい、古いダイヤル式電話の受話器を取る。耳に押し当てると優しい声がした。

「もしもし、ゆいちゃん?」

「はい、結衣子です。おばあちゃん?」

「ええ、お久しぶり。元気だったかしら?」

「うん。頼まれてた箱、捨てておいたよ」

「よかった。ありがとうねえ」

 ちょっと話して受話器を置く。この電話をどうすればいいか聞くのを忘れた。電話線がつながってなくて十年前に亡くなったおばあちゃんのお友達からだけ、時々かかってくる電話。おばあちゃんからかかって来たのは始めてだ。

「四十九日過ぎたからか」

 おばあちゃんは無事にたどり着いたらしい。数年前に亡くなったおじいちゃんには再会できただろうか。

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300字ss投稿用 水谷なっぱ @nappa_fake

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