　実家を取り壊すから、ゴミをまとめる。いらないものをどんどん捨てよう。昔のテスト、古い教科書、埃をかぶった学生鞄。

「あ、これも」

　父が放置していた金槌や釘。母がすぐに飽きてしまったミシン針やハサミ。

「こっちもだ」

　冷蔵庫の中の古い食材。腐りかけの野菜や、変色した肉。悪くなった食材を捨てたらほとんど空になったので、冷蔵庫も捨ててしまおう。古びた食器、赤黒くさびた包丁、黒ずんだダイニングテーブル。

　と、そのとき家の呼び鈴が鳴った。やってきたのはお隣さんだった。

「ご両親がいきなり行方不明だなんて大変ね」

「そうですね、一体どこへ行ってしまったのか」

　話していて思い出した。押し入れの中の腐った布団も捨てないとね。

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