いつかの後悔。

「寒いね」

「そうだねぇー」

「あのさ、コンビニで肉まん買わない?」

「あ、いいね。ナイスアイデア」

「ふふーん。天才でしょ」

「あーそうね、天才デスネ」

「信じてないなー」

「あはは」


 そうして夕暮れに染まる坂道を並んで歩いていた。付かず離れず、中途半端な距離で。二つの影は繋がらないまま並んでいた。









 ある日。男はポツリと呟く。



「今日は何買って帰ろうかな」



 知ってる。もう帰ってくる返事は遠くにある。


 どこかで後悔する自分がいた。

 なんで手を伸ばさなかったのかと。



 臆病な自分は逃げ出して、今このザマだ。笑えるよ、ほんと。



 視界がふやけてきたので、慌ててコンビニに入った。



 外はまだ寒い。






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冬のお話。 朝凪湊 @minato1107

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