兄を心から慕うエリと、無愛想ながらも妹の面倒を見るトール。
逃避行を続ける二人はとても近い存在ですが、距離を置かなくてはいけない秘密も持っています。
知らずのうちに寄り添っていく心と心、いまにも繋がりそうな指と指、しかし――と、もう目が離せません。
魅力的な登場人物達が人生を懸けて繰り広げるストーリーとともに、この物語のもう一つの魅力は、一文一文を読むごとに脳裏に広がる物語の景色です。
どこでもドアをくぐらせてもらったようなリアルさで、物語を読んでいる間は冬の国に連れられていくのです。
それもそのはず、作者の熱意は文章の隅々まで行き届いています。
さりげない描写にも繊細な表現が使われ、読み手を物語の舞台へといざないます。
その世界が、本当に美しい。
ふんわりとした水彩画や絵本のような、いとしい冬の街です。
「カリブの時の島」を読んで以来この作者様の大ファンなのですが、やはり今作も私の心を奪って放しません。
今後も楽しみに読ませていただきます!
いつか外の世界へ飛び出そうと心に決めていた健気な少女と、
目的を抱え、影を負って故郷を飛び出してきた無愛想な少年。
2人を繋ぐ糸は「ヘンドリー・アーベル」という男の名だった。
また、別の一幕がある。
とある田舎町で妻が夫を殺すという血生臭い事件が起こった。
妻の証言に矛盾はないようだが、所轄の刑事は違和感を覚え、
夫の死亡時刻前後に家出したという息子の行方を追い始める。
産業革命期のヨーロッパ某国を舞台としたジュヴナイル作品。
読みやすい文章の中にも格調や気品があって、引き込まれる。
厳しい社会を背景に、少年と少女の逃亡劇はどこへ向かうのか。
続きを楽しみにしています。