「謎県」に関する報告書

小さな巨神兵(S.G)

プロローグ

謎県。それは、埼玉県と東京都の間の「謎山脈」にかこまれた、2014年まで国にさえ存在を知られていなかった県である。


2014年、8月23日。謎県は、下水道の中で遊んでいた東京都の中学生によって発見される。謎県にも下水道は通じていたらしく、探検ごっこをして進んでいくうちに迷い込んだと証言。

なぜ下水道が通じていたのか、そもそもなぜ今まで一度も発見されなかったのかなどは一切不明。謎県上空は飛行機の飛行ルートに指定されていたにも関わらず、ベテラン飛行士でさえもが「見たことはない」と断言。

また、グーグルマップ等にも全く映り込んでいなかった。

前例のない事件に、官僚たちはすぐさま委員会を招集、対応を会議し、探検隊を送り込むことを決定した。


以下、日不専等の報告書より抜粋。


8月29日、地理学者の虚構根岸を隊長とする第一次探検隊が内部に向けて出発。出口付近で、自生していたと思われるススキに似た植物や、土のサンプルを入手。


9月30日、植物の鑑定が終了。

この地球上のものと遺伝子が99.89%同一ではあるものの、厳密にはこの地球上にない植物であることが判明。

入手した植物は、生態系を乱す可能性があるとして、レベル4の隔離施設にて管理、研究されることに。


10月1日、土の鑑定が終了。

土の中から、今まで発見されていなかった、元素番号190番の元素が発見される。

ウランよりも元素番号が大きいため、本来なら人工的に生み出されるはずであるが、なぜか自然界に存在していた。

また、それまで93番以降の元素は全て放射性元素であると考えられてきた。しかし、発見された190番元素はなぜか放射能を発しなかったため、科学者たちは頭を悩ませた。

また、この発見が全国ニュースで配信されたことによって、「謎県問題」に注目する国民が増え始める。


10月21日、閣僚会議によって、第二次探検隊を送り込むことが決定。

また、領地関係専門の法律家を集め、「日本国の不明領地に関する法規専門委員会」(日不専)を結成。

同日、日不専によって、不明領地を仮に「謎県」と呼称すると決定。


11月1日、「不明領地法」が採決。

不明領地の税金や地方自治組織などに関する法律が定められる。

同日、第二次探検隊が出発。


11月30日、第二次探検隊が帰還。

「謎県」の住民とのコンタクトに成功したと報告。

相手の言語は日本語で、家などの建造物も現代の日本と変わらなかったという。

また、謎県知事である谷口蘭堂も伴って帰還。

その後、謎県知事と総理大臣の大河内清次との間で会合が開かれた。



2015年4月20日。圏央道を謎県までつなげる工事が始まる。


4月29日、事前調査で、謎県へつなげることが不可能と判断され、工事中止。

調査者の報告書によると、『東京から謎県に車で向かったが、謎県を見つける前に埼玉県についてしまう。』とのこと。


5月12日、謎県へは下水道以外でいけないことが度重なる実験によって証明される。

すぐさま下水道の拡張工事が始まる。


8月21日、下水道の拡張工事完了。

出入口が、大型車が通れるくらいの広さまで拡張される。


9月14日、謎県が、正式に日本国の県の一つであると認められる。


9月20日、謎県がディラックの海に存在する、という仮説が学界に発表される。



2017年8月23日、謎県発見3年記念パーティーが東京都で開かれる。




謎県には、生まれながらに特殊能力を持つ人々が多く存在する。

そのため全国から、「能力が高すぎて親の手に負えない子供」たちが数多く集まってくる。

これに対し、県は全国と県内の、特殊能力を持つ子供たちだけを集めた指定校、「謎県立ほんまかいな小・中・高等学校」をそれぞれ建設。

なお、超能力者が多い理由は目下調査中。


以上、抜粋。













かくして、この物語は始まるのである。

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