「え」…エゴ・エスカレーター
「え」…エゴ・エスカレーター
その薄い瞳孔から見える世界は、
どれだけ狭いのか、覗いて見たくもなる
血統書付きの高貴な犬達が、
靴を舐める世界に飽きていた僕にとっては
獰猛な猟犬だった君こそが、
本物の感情を持っている様に見えた。
だから、君の家を壊して、
まるで救世主の様に君を捕まえた。
けれど、そんな純血の世界に
君を連れてったら、
簡単に君は殺されてしまう。
それでも、傍に置きたいなら
いっそ、
「公様!またですか!?」
「だって、洗礼受けたいって言うから」
「だからって、
ワインを頭からかけてやる必要が何処に!?」
「でも、あの人の望みは叶った」
「何故、その様なやり方を。
彼は薄汚れた血でありながら優秀な存在で、」
「……やっぱり、」
「どうかされました?」
「ううん。これで良いんだ、」
きっと、君の見えている世界では
僕は情けで、貧しい家の人を拾って育てている
誰にでも優しい神様に見えるんだろうね。
けれど、実際は、君の全てを壊したのに、
君を痛めつけることでしか、君を守れなくて、
その行為を、止めれなくて、
それどころか、加速していく。
どうしようもなく、
情けない僕が本当の姿だ。
主従500文字短編集 砂の さと葉 @sano3sano3
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